reminiscently

プロローグ

1





「また会おうよ。“サイクル”だ」


  別れ際に言った僕の言葉。彼女が作った再会の約束“サイクル”。

たった数週間だったけれども沢山の思い出が出来た。寂しかった。

だから彼女との思い出の言葉で約束しようと思った。

彼女は泣き笑いながら答えた。


「違うよ、そうじゃないよ。必ず会うんだよ。だからね、また会うって約束はサイクルだけど、 必ず会うって約束は“リサイクル”なんだよ」


  僕は驚いた。

何とも彼女らしい答えに僕は笑いが込み上げてきた。

彼女の得意な自分と友だちの間にだけ通じる合言葉。最後にまた一つ増えた。嬉しかっ た、おかしかった。

お涙頂戴の湿っぽい別れが苦手な僕にとっては丁度良かったのかも知れない。


「うん、約束だ。“リサイクル”だ」


  僕がつき出した小指に彼女が小指を絡める。

何か心がこそばゆい。


再会の約束“サイクル”

必ず会う約束“リサイクル”


「うん、“リサイクル”だよ」


  彼女と交した約束を胸に絡めていた指を離す。

離れていく体温に名残惜しさを感じる。

でも今は寂しくない。

約束があるから。

必ずまた再会するから。

車が走り出す。

遠くなっていく彼女。

どんどん小さくなっていく。

だけど分かる。

彼女も笑顔だ。

彼女には笑顔が似合う。

別れは笑顔が一番だ。

いや、これは別れなんかじゃない。

だって“リサイクル”なんだから―――




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