シリーズ:知られざる障害の実態

その1

−複合障害:盲聾(もうろう)について1−



  まず、盲聾って何?と思う人が多いはずなので説明しましょう。
簡単には、目が見えなくて、なおかつ耳も聞こえない状態、あるいはその状態の人のことです。
特に完全に目が見えなくて、なおかつ完全に耳が聞こえない人のことを、全盲聾(ぜんもうろう)といいます。

  このような方々は非常に少ないように思われています。
しかし実際には、日本だけで数千人はいるはずだ、と関係者の間で言われています。 というのも、盲聾の人の多くは家に引きこもっているからです。

  全盲聾だけでなく、盲聾、それに準じる方々を合計すると、約二万人います。
しかし、引きこもっている人たちばかりではありません。社会に活躍の場を求め、活動している方もたくさんいます。
盲聾の人とのコミュニケーション手段、実際の生活などについて、説明していきたいと思います。

  さて、目が見えず耳も聞こえない、という生活が思い浮かびますか?
想像するだけでも、大変なことだとわかるでしょう。 もっとも、よく知るためには、疑似体験をしてみるのが一番ですが、 経験した人のなかには「人生観が変わった」なんて言う人もいます。

  実際、人間の五感のうち、『見る・聞く』が失われているのです。
生活には、残された三感のうち、『嗅ぐ・触る』のみ使っているのです。 「嗅覚なんてそんな役立たないじゃん」って思っている方、意識がひっくり返ります。

  昔、ある番組(たしか『あ○あ○大辞典』だったと思うが)で嗅覚を使った実験を行いました。
その内容は「においだけで自宅を当ててください」というものでした。
結果は被験者10人に対し全員が正解しました。これは、誰であってもかなりの高確率で当てられるでしょう。

  このように、自宅の判断をすることができます。また、においで天気が判る、という方もいます。 このように、盲聾の方々は残された三感をフルに働かせて生活しているのです。


  次に盲聾の方々とのコミュニケーション方法についてです。
これには、実にたくさんの方法があります。有名(?)な方法が指点字です。 大概の人は点字を知っていると思います。ここでちょっと点字について話しましょう。

  点字は縦3×横2で配置されています。それぞれの点に番号があります。だいたい下のような番号配置です。

(1)(4)
(2)(5)
(3)(6)

例えば、(1)の点だけなら『あ』、(1)と(2)の点なら『い』という風に決まっています。

  この点字を打つときの指の動きで伝えるものを指点字といいます。
点字の打ち方にもいろいろあります。まず、パーキンス式と呼ばれるものです。
点字打ちの基本は

それぞれ対応します。その指でパーキンス式タイプライターを押すことで、点字がタイプされます。
指点字では盲聾の方の手の甲の上に重ねるようにして、指先が点字を打つような形で伝えるのです。 対面して、指点字を使う方もいます。
  また、最近、同時に多数の方々に指点字を打つことができる機械も発明されました。
名前は『ゆびつきぃ』だったと思います。この指点字を使うのは、主に昔は盲だったが、後に盲聾となった方です。
また、点字を指先で読み取れるようになるには、一年ほど訓練が必要とされています。

  点字はすべてが平仮名で表されているので、意味の取り違いも生じます。単語ではわかりません。例を挙げると…

あつい→厚い、暑い、熱い、篤い
きょう→今日、京、経、卿
etc

文章ではたいていは区別できます。しかし、次の文章ではどうでしょうか?

「今日、○○卿と一緒に京料理屋で協議するんだ。」

文法的な間違いもありますが、こんな感じでしたら、通訳される側は混乱を起こすでしょう。
指点字でコミュニケーションをとることは、難しく感じるかもしれません。 実際には、最も伝えたいことだけを点字にすればいいのです。

  …本題からそれました。盲聾の方との別のコミュニケーション方法についてです。
指点字のほかには、触手話というものがあります。字の通り手話を触ることでコミュニケーションをとるというものです。 主に昔は聾だったが、盲聾になったという方が使います。これは非常に難しいことです。
手話は目で判断するものです。したがって、触手話では指点字以上に意味の取り違いが生じるのです。
ところで、日本の手話は二つあるということはご存知ですか?日本手話と日本語手話です。 この違いは日本語の文法に沿っているかどうかなのです。
手話ニュースはご存知ですか?ここで使われている手話には様々な工夫が凝らしてあるのです。 といっても、手話がわからなければ工夫が何なのかも分かりませんが。 手話については別な機会に詳しく述べることにしましょう。
さて、触手話は指点字よりも技術を必要とします。 また、被通訳者がどこまで手話の知識があるかについてもしっかり理解している必要があります。

  盲聾の方のコミュニケーション方法として、手のひらにカタカナを書く、という方法があります。
これは、ある日突然盲聾になった方が使います。これは誰でもできます。
では、生まれつき盲聾の人とのコミュニケーションをとる方法はあるのでしょうか?現時点では確立されていません。 しかし、何かしら方法があるはずです。そのような研究も進められています。 ほかについては、次回に回しましょう。


  自分からこれだけは言いたいことがあります。

「障害者に対して、『かわいそう』などと思っていませんか?その固定的な観点は誤りです。」

  この企画を思いついたのも、自分が『一人の人間』ではなく『一人の障害者』として扱われた経験を持つからです。 これは悲しいことです。自分と会ったことのある人はわかるでしょうが、接してみれば、障害(難聴)を持っているだけで、 それ以外は普通の人となんら変わりないのです。社会に出ている障害者は、自分の置かれている立場を理解しています。 そして、多くの人とコミュニケーションをとろうとします。自分は時折、開き直りかもしれませんが、

「聞こえないということがそんなに問題なんですか?」

といってやりたくなるときがあります。

  最後にある新聞に書かれていた記事から思ったことで、
『人間だから欠点や失敗はあるのは当然。長所を生かすこともできる。
しかし、障害があるからといって、その人の長所を無視してもいいのですか?』

mr-t :
 意見、訂正などはいつでもお受けします。理系人間なので、文章に問題があるとは思いますが、ご了承ください。
その2へ

目次へ戻る