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「帝国の死亡証明書」〜ウェストファリア条約〜




<五限目>




さあ、最終回だ、元気出していくよん。
では、続きを。


さて、こうして結ばれることとなったウェストファリア条約とは、どのようなものだったのでしょうか。

  これは、大きく四つに分けることが出来ます。

  • 一つは、ドイツにおけるカルヴァン派の公認。
  • 一つは、神聖ローマ帝国内の領土の再分配。
  • 一つは、スイス・オランダの正式独立。
  • そして最後に、帝国諸侯の事実上の独立でした。


  一つ目のカルヴァン派の公認によって、神聖ローマ帝国内の各諸侯は、これまで以上の信仰の自由を与えられることとなります。

まあ、本来の目的がここにあったのですから、これ以上言及する必要はないでしょう。

  二つ目の帝国内の領土の再分配では、フランスがアルザス地方の大部分とメッツ・トゥール・ヴェルダンの三司教領を獲得し、 スウェーデンがヨーロッパ大陸における初めての領土となる西ポンメルンを獲得したのをはじめ、 ザクセン・バイエルン・ブランデンブルク等のドイツ諸侯が、新たに領土を獲得することとなります。

ここまでは、まあ、そのままなので特に気にする事もないでしょう。

  しかし、三つ目のスイス・オランダの独立に関してからは、多少意味合いが異なってきます。

スイスは1499年、オランダは1581年に、それぞれ事実上の独立を達成しています。
オランダに関しては独立宣言まで出しているのだから、それは紛れも無い事実なのですが、ヨーロッパにおいて、 彼らの独立を認めたくない国家も存在しました。それが、スペインとオーストリアの両ハプスブルク家だったのです。
つまり、この条約によって規定されたことは、スイス・オランダを独立させることではなく、 ハプスブルク家がその独立を認めるというものであったといってまず間違い無いでしょう。

  そして四つ目の帝国諸侯の事実上の独立ですが、これもまた、少々複雑な事情を伴います。

  1356年、時の神聖ローマ皇帝カール4世は、金印勅書により、 皇帝を七人の選帝侯の多数決によって選び出すという方式を確立します。

  この時既に、七人の選帝侯には、各領内における最高主権が与えられていました。 つまり、七選帝侯は事実上独立していたということが出来ます。その後、皇帝権力の衰退と共に、確たる証は無いにせよ、 七選帝侯を除く各諸侯の間も、半独立の状態を得ることになります。

それを正式な形で承認したのがこのウェストファリア条約であったわけであり、諸侯の独立は正式のものではなく、 表面上は神聖ローマ皇帝の統治下にあるというものだったにせよ、先ほどのスイス・オランダと、 何らの変わりもない事であったということが出来るかも知れません。そして、このことが、ウェストファリア条約が、 帝国の死亡証明書と呼ばれる所以であることは、言うまでも無いでしょう。



  ところで、この「帝国の死亡証明書」というものが指し示す内容に、少しだけ異説を唱えてみましょう。

  つまり、帝国というものに対する解釈を少し広げてみようと思うのです。ここに言う帝国とは、 神聖ローマ帝国という単一の国家ではなく、ハプスブルク家による世界帝国を現しているとしてみましょう。 1519年スペイン王であったカルロス1世がカール5世として神聖ローマ皇帝の冠を戴いたとき、 世界は紛れも無く、ハプスブルク家のものとなりました。ヨーロッパから新大陸、東南アジアに及ぶこの大帝国はしかし、 1556年のカール5世の死によって幕を閉じます。ハプスブルク家は、その大帝国の再建という夢をこの三十年戦争に託し、 そして、敗れたのです。

  その後、ヨーロッパには絶対主義国家の並立による秩序のもと、近代を迎えることとなり、 ヨーロッパ全土を支配するハプスブルク的ヨーロッパ帝国が出現することは無かったのです。

  すなわち、ウェストファリア条約は、このハプスブルク的ヨーロッパ帝国の死亡証明書であった、と言えるのではないでしょうか。

ってなところで、

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(゜д゜)y-┛~~~フゥ〜


終わりです。
長かったです。
最後のほうはすっかり教科書レベルになってしまいました。(苦笑
それにしても、いままでありがとう御座いました。
ちなみに、あやふやな知識をもとに書いておりますので、信用しないでください。
また、誤字脱字、内容の間違いなどのご指摘は一切お受け付けませんのであしからず。


気が向いたらまた・・・はい、すいません、もうしません。


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