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ある街角で その2

どんな街角にも人々の息吹があって、たくさんの物語がある。
たとえ、どんなにたわいないことも二度とめぐり来ることのない物語。




物語はすぐそこに

うた
猫と風と思いと
あの日
夜を見上げて
うずき
夜を視る



うた


言葉が欲しい

この焦りも苛立ちも

何もかもを越えていくような

歌が欲しい

それは歌で詩で

いまを越えていくチカラ


言葉が欲しい

胸の中から沸き上がる言葉が


猫と風と思いと


眠ってる猫

耳を立て、髭を張り

眠り切らない眠り


それは風を聞いているから

風には思いが

諦めて忘れられて捨てられた思いが

きっと、とけているから


私の隣、流れる風に

いくつも、いくつもの思いがきっと

私から零れ落ちた思いもきっと


流れる風は優しく悲しくセカイを巡る

零れ落ちた思いを猫が聞いているなら

少し恥ずかしいかな


あの日


古い写真、ほんとに古い写真。このとき、そこに写ってる私がいくつだったのか。 もう、思い出せない。けどそこの写るセカイはとても輝いていた。 空も野原も、そこに写る私たちも。そう、輝いていたんだ。



一家で上京して四年。腰を落ち着けた家族を残して、私は地方の大学へ進学しようとしてる。 さっきの写真は大掃除でも動かさないような荷物の中にあった。



写真の中に写る私達は時計を囲んでる。それはたしか、私より早くあの街を出た佳奈へのプレゼント。 どんなに離れていてもどんなに時が流れても一緒。そうやって笑い合ってたんだ、あの日。



そう、なのにどうして忘れてたんだろう。どうして・・・


佳奈、美香、朋恵。みんなの声が帰って来る。

ねえ、みんなどこへ行っちゃったの?

いま、どうしてるの?

ねえ、おしえて・・・

ねえ、みんな、私はね大学に入って新しい生活が始まるところだよ。新しい街へ行くんだ。

一人だよ。

一人でだよ。


どうしてだろう。なんともなかったのに。どうしてだろ・・・

みんなに、会いたいよ。

高校の友達よりずっと、ずっと会いたいよ。

ねえ、会いたいよ・・・


夜を見上げて


夕暮れを過ぎた夜の中、私は家路を辿る。

いつもの場所で足を止め空を見上げ、今日もまた星を探した。

どんなに少なくても弱々しくでも探せばほら、星はそこに。

あの日見た星空にはかなわなくても、星は確かにそこにある。

私は夜空を見上げてたくさんのことを思う。

私は見上げるの、微笑んで、ため息をついて。

そしていろんなものを受け取る気がする。


うずき


授業の合間。なんとなく、息が詰まるような気がして、わたしは、空を目指した。

屋上への階段の上、鍵の掛かったドアをみて思う、物語のように屋上に出れればいいのに。

私は、籠の中の鳥?

ふう、と息を吐いて小さな窓から空を仰いで教室へと帰る。


おかえり、友人の声を聞いて続きが始まる。消えないように忘れないようにノートをとる。


夜を視る


私は毎晩、夜空を見上げる。

布団にもぐり込むそのちょっと前に。

胸に夜の空気を吸い込んで、夜空を見上げるの。

夜の空気の匂い、それは毎晩違う。

夜空を見上げて、月を探す。そして星を見る。

占いとかジンクスとかそんなの関係なくて、ただただ見上げるの。

胸に何かが流れ込んできたなら、私は眠る。



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