学校の階段!?
見える桜儚
9
同時刻、撫子宅。
「えっと、これで全部だな…」
ひとりきりの部屋で撫子は鞄に荷物を詰め終えた。
なかなか広めの4LDKのマンション、撫子一人では部屋が余ってしまい、
そこに黒魔術の本が段ボールごとほかってある。
「しかし、お爺様やお父様も人が悪いな。私は知らぬ間に神霊者になっていたとは…」
段ボールの山をちらっと見て、撫子はフッと笑った。本は全て読んだが、使った事はない。
たった一度、除霊薬を作ったぐらいだ。
「そういえば、小さい頃魔方陣を描こうとして、お父様にぶたれた事があったな…」
今思えばそれも不思議じゃなかった。
「お父様、お母様、お婆様…そして、お爺様。もう会う事もないでしょうが…」
自分は除霊者を辞めた。もうシュパイヤー家の人間ではない。
かといって、普通の家庭である母方のアーノルド家に行くわけもいかない。
「フランクお爺様は大好きだが、“アイツ”には会いたくないからな…」
アハハ、と撫子は笑った。
ふと、カーテンの引いていない窓から月明かりが差し込んでくるのに気付いた。
「綺麗な月だ…」
タツキも…同じ月を見ているのだろうか?
そう思いながら、撫子はゆっくりカーテンを閉めた。
その後だった。
撫子の部屋の方を見つめる人が、箒に乗って浮かんでいたのは。
「やっと見つけた……。私のプリンセス……」
そして、人はフッと消えた。
そして、人はフッと消えた。
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