学校の階段!?

もう、戻れない・・・。

16

「ふぇ〜、終わったね〜……」


  全てが終わると、健は元のヘタれ顔に戻ってその場に座り込んだ。

  確実に実力をつけてきた彼は、もはや神術12大奥義の1つである「祷苦滅」を 意識をも失わずに使いこなせていた。


「ケン…」


  自分の名前を呼ばれて、健は振り返った。撫子は悲しそうな顔をしていた。


「撫子さん…」

「私は…これで良かったんだ…よな?テムズの命を無駄にして…」

「してないよ」


  撫子の言葉を遮るように健は続けた。


「テムズさんがいてくれたから、撫子さんはこれからの自分を見ることが出来た。 だから、彼の死に報いるには、生きるしかないんだ。 生きて、生き抜いて、テムズさんとの約束を果たすんだよ」

「……そうだな」


  撫子はフッと笑って、空を見上げた。天井に浮かぶ真っ青な空は何処までも………

ん?天井が空?


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ―――っ!!!!」」

「どうしよーっ!!坂下さんに怒られちゃうよぅーっ!!」

「いやっ、あの人はカンテンだから…」

『撫子、それは“寛大”よ』


  その声に反応して右を向くと、そこには桜儚と達樹がいた。


「タツキ…」

「撫子、ちょっと出れるか?」

「え?…あ、あぁ…」


  するといきなり歩き出す達樹に撫子はテクテクとついて行った。

「桜儚〜…」

「お疲れ様、健。ま、アンタにしちゃよくやった方なんじゃない?」


  そう言いながら、桜儚はニッコリ笑った。その笑顔が健にとっては1番の疲労回復薬だった。


  一方、こちらは中庭。


「タツキ、どうした?」


  あれから一言も喋らない達樹の背に撫子は恐る恐る聞いてみた。

  すると、達樹はいきなり撫子を抱きしめた。


「えっ…お、おいっ?!」

「撫子…愛してる」


  突然の告白に撫子は戸惑った。


「ど、どうしたタツキ…」

「愛してる、世界一お前を愛してるんだ…。 もしさっきテムズさんと交わした約束に嘘がないなら、 今ここでもう1度俺に誓ってくれないか…『俺の傍で、一生生きていく』と」


  撫子は2呼吸間を置いて、こう言った。

「Yes, I will. I will be with you forever.
(あぁ、誓う。私は一生お前と共にいる)」


  達樹はにっこり笑った。撫子もにっこり笑った。 そして、どちらからともなく、熱い口付けを交わした。


夏の始まりのことだった。



第12章了




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