学校の階段!?
父(前編)
1
そこに、自分はいない。代わりに、2人の男が立っている。
年は両方とも30代後半といったところだろうか。
何故か、何処かで見たことのあるような衣装を身にまとっていた。
顔はぼんやりとしてよく見えない。
しばらくして、声が聞こえてきた。片方の男がもう片方の男に向かって激しく叱責している。
責め立てられている方は、ただ下を向くだけだ。ただ、何を言っているかは分からない。
そのうち、叱責していた男の手は何かの動きを始めた。
あれは……。
「くらえ、優秋…!!!」
「やめろっ、やめろぉぉぉぉぉっっ!!!」
「?!!!」
そこで、夢は途切れた。
大羽神宮の朝は早い。さすがは日本一の神宮である……と、
普通ならこうナレーター部分が語るはずである。しかし、これは「階段」である。
「あれ〜、達樹相変わらず早いね〜♪」
部屋で朝日を浴びながら着替えをする麗しき青年に、
最近眼鏡を割らずにかけれているまったり声の少年が寝巻き姿のまま声をかけた。
「…健、俺は毎朝同じことを繰り返すぞ…」
「ん?な〜に?」
「何で神社の奉公者が朝8時半起きなんだぁっ?!!!!」
達樹と健の寝る部屋にあるテレビはしっかり「はなまるマーケット」がかかっている。
「え〜、だって坂下さん達9時以降に起きるんだよ〜?」
凄い人は、「おもいっきりテレビ」のオープニングテーマと共に起きるらしい。
達樹は予想以上の神宮のまったりさにため息をついた。
「…あの初日の集合時刻は何だったんだ…」
「気分でしょ〜?」
健は最近、笑顔で毒舌という技を身に付けた。
そんなわけで、あのテムズが来た日から2週間ほどたっていた。
4人はそれぞれ修行メニューも作り終え、毎日修行に励んでいる。
ちなみに、健は主に精神集中の為の座禅と霊力増幅、撫子は新たな神術を会得中、
桜儚は坂下にくっついて何かしている。
「達樹、もう“雅さん”の所行くの〜?」
着替え終わった達樹は、「あぁ」と言って襖を開けた。
「悪いけど、また飯2人分持ってきてくれるか?」
「いいよ〜♪今週はひじき週間だから、楽しみにしててね〜♪」
「やった!!めっちゃ期待してるわ!!」
達樹は笑顔でそう言って部屋を後にした。
「さて、と…」
そして、渡り廊下を少し進んだ所で止まる。
昨夜見た、健の父と白井の夢を忘れるように頭を少し横に振って、達樹はまた歩き出した。
序章へ戻る
トップへ戻る