学校の階段!?
父(前編)
2
健達の生活している棟から長い渡り廊下を5本ほど北へ渡ると、
1つだけ古臭い感じのする棟…というか、蔵がある。達樹はいつも通り、ここの鉄の扉の前に立った。
「さて、と…」
達樹はそう呟くと、その扉についている錆びた錠をガチャガチャ手で外し始めた。
しっかり鍵穴もあるのに、そんな事で開くわけないのに…と普通の人なら思ってしまう。
しかし、錠は簡単に外れた。
「…ったく、毎度思うけどこの錠意味ないよなぁ…」
やれやれ、と言いながら達樹は鉄の扉を両手で開けた。
扉はいかにも重々しい音を立てて、ゆっくりと開く。中は閉ざされた空間のように、光がない。
「蔵」って感じ候である。
「おっはよ〜ございま〜す…老師〜?いないんスかぁ〜?」
達樹はいつものように扉を入ってすぐの所に無造作に掛けてあるランタンの明かりをつけ、
それを前方にかざしながら暗い中を歩いていった。彼が探しているのは、
この蔵の正式名称である「大羽神宮文書保存室」の室長、通称「老師」だ。
いつもこの蔵の中で電気式蝋燭の光だけでひたすら本を読んでいるという、「本の虫」である。
しかし、そのため記憶力と知識量は凡人の域では考えられないような凄さなのだ。
達樹の修行メニューは
『出来るだけ多くの神霊関係の知識を頭に入れて、健や撫子をサポート出来るようにすること』、
そのため必然的に「老師」の元で働くことになったのだ。
しかし…。
「ったく、あのジジィ今日は何処で本読んでるんだ〜?
頼むから入り口付近にいてくれよなぁ…俺、『力』があるわけじゃねぇんだし…」
美青年は上司をジジィ呼ばわりである。…いや、実際ジジィなのだが。
「確か950歳だしな、あのジジィ…干からびてたりして」
達樹は自分でそう言って自分でウケて、クスリと笑った。その瞬間…。
「・・・ん?」
何か踏んじゃったらしく、達樹の足元から奇妙な音がした。 おそるおそるランタンを近づけてみると・・・白色で長い髪をたらした、 150前後の人がうつぶせで踏まれていた。
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