学校の階段!?
父(後編)
1
「う・・・え゛っ・・・・・・・」
その光景の悲惨さに、健は思わず嘔吐した。
達樹は医療現場を何度も見ているから平気といえば平気なのだが、それでも背筋が寒くなるのを覚えた。
「大丈夫か?」
そっと健の背中をさする。
それは、手の届かない自分の背をさすって何とか寒気を和らげようとしているかのようであった。
「うん、ごめん・・・」
ひとしきり吐瀉物を異次元の世界にぶちまけた後、健は数回咳をしてそう言った。
「父さんの死亡現場なのに、気持ち悪いとか言っちゃ駄目だよね・・・」
あはは・・・と健は力なく笑った。
「・・・いいと思うよ、俺はな」
「え・・・?」
「だってさ、死に方に関して本音を隠す必要はないと思うんだ。
殺されたら『どうして殺されたの?』、事故に遭ったら『どうして私を置いて逝っちゃうの?』、
家族がそう嘆くのは自然な事だ。今回の優秋おじさんの場合だって、決していいとは言えない最期だった。
正直、あれを見て『いい死に様だった』って言うよりよっぽどいいと思うぜ」
達樹はそう言って少しだけ微笑んだ。
「・・・うん」
健も少しだけ微笑んだ。
「で、どうするよ?」
達樹が本題に入った。健からも笑顔は消える。
「…そうだね、僕は父さんの死の真相を知った。これから、現実世界に帰るんだよね…?」
「だな」
「…白井さんに…全部話すんだよね…」
「・・・まぁ、必然的にはそうなるだろうな」
「・・・それから・・・は・・・」
それきり、二人は黙り込んだ。
「・・・知らない方が・・・良かったのかなぁ・・・」
健はぽつりとつぶやいた。
知ったからといってどうなる訳でもない。優秋が帰ってくるわけでもない。白井がどうなる訳でもない。
結局、自分の「知りたい」という欲望のままに赴いてしまっただけなのだ。
「・・・健」
「ん?」
「・・・帰るか」
「・・・だね」
その時。
2人は背後から腕をつかまれた。
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