学校の階段!?
父(後編)
2
ガシッッ!!!
2人は背後から腕をつかまれた。
「「・・・え?」」
驚いた2人が後ろを振り向くと…。
「帰るのはまだ早いですよ、お二方」
若い頃の白井が、いつもの目つきでしっかりと腕をつかんでいた。
「し、白井さ…?!!」
健はそこまでしか言葉が出なかった。今、自分達は『大神霊鏡絵巻』の中に入っている。 ここにいる人々やあるものは全て、言霊が見せている仮想世界だ。 だから、若い頃の白井が自分達の腕をつかめるはずはない。
「どうして言霊が見せる幻が自分達を掴めるのか聞きたいようですね」
白井は全てを見透かしていると言わんばかりの顔で尋ねた。
「簡単な事です、私もこの絵巻の中にいるのですよ。そして、言霊の見せる“私”の中に入っていた」
「同化・・・?そんな事が・・・」
「・・・出来るんだよ、達樹」
信じられないといった顔をしている達樹に健がぽつりと言った。
「はは・・・やっぱ、何でもありな世界だな、ここは・・・」
達樹はそう苦笑いをした。
「さて、お二方。何故ここにいらっしゃるのですか?」
白井の腕を掴む力強さは変わらない。 このか細い腕の何処からそんな力が出てくるのだろうか。 長身でスポーツ万能の達樹でさえ、それを振り払うことは出来ない。
「・・・僕達は、父さんの死の真相を調べに来たんです」
少しの沈黙の後、健が口を開いた。
「ほぅ・・・で、いかがでした?」
白井の表情は変わらない。
「父さんは・・・あなたの禁術で死にました・・・」
「そうですね、その通りです」
健も達樹も一瞬何を言われたか分からない顔をした。 それは、白井が事実をあまりにもあっさりと認めたから、そして・・・。
「てめぇ・・・それでも人間かっ?!!」
達樹が少しの隙を見て白井の腕を振り払い、彼の胸倉を掴んだ。
「達樹?!!」
健が制す、が、達樹はそれに応じない。 自分より背の少し低い白井を見下ろして睨みつけている。
「山梨様、私は人間です。妖怪でも猿でもありませんよ」
白井は視線を逸らすことなく、淡々と言う。 その余裕とも取れる態度が達樹の怒りにまた火をつけた。
「そんな事言ってんじゃねぇよ!!俺の大切な親友の父さん・・・ てめぇの親友殺しておいて、どうして平然としてられるんだよぉっっ!!」
達樹はついに、拳を振り上げた。鈍い音が一発、世界に響き渡る。 白井は乳白色とも透明とも言える不思議な色の地面に倒れた。
達樹はそれだけでは白井を離そうとしない。 倒れている白井に覆いかぶさるようにすると、再び拳を握り締めた。
「どうして・・・どうしてっ・・・!!」
行き場のない怒りを白井にぶつけ・・・ようとした。 しかし、その拳は白井の手のひらでしっかりと受け止められる。
「さぁ、どうしてでしょうね?」
そして・・・。
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