学校の階段!?

父(後編)

3


「達樹ぃぃっっ!!!」


達樹は白井の蹴りを受け、血を吐いて倒れた。



「すみません、この方は血気に逸りすぎている。 私は、あなたとゆっくり話がしたかったものでね・・・五寸様、いや・・・健君」


  白井は横になっている達樹を支えにしてゆっくりと起き上がった。 健は、達樹の呼吸が落ち着いていることを確認し、徐々に顔をあげた。


父の敵―そう言えないこともない。


  しかし、健はそう思わなかった。


「・・・白井さん」

「・・・何ですか?」


  次の瞬間、健の目から涙が零れ落ちた。


「ごめんなさい・・・白井さん・・・」


  健の突然の涙と言葉に、白井は驚いた。


「な、何をいきなり・・・?!」


  健の涙は留まることがない。


「・・・父さんは・・・貴方の期待を、裏切ったのですね・・・」


  白井の全ての動きが停止したように思えた。 息が詰まる。呼吸をするのを、心臓が拍動をするのさえ忘れてしまったかのようだ。


「どういう意味です・・・?」


  だが、発せられる言葉だけは冷静そのものだ。


「父さんと、白井さんの約束を・・・父さんは忘れていたように思った、 だからあんな事をしたんでしょう・・・?」


  健の言葉は白井の声さえも飲み込んでしまったように思った。


「確かに、貴方はお母さんの事が好きだった・・・僕や・・・ 父さんがお母さんを守りきれなかった事も頭にきた。でも、実際は・・・」


「父さんが幸せだったから、そして、 神霊者として尊敬していた父さんが腑抜けているように思えたから・・・ 貴方は失望したんだ、父さんに・・・」

「だったら・・・」


  白井はようやく言葉を発することが出来た。


「だったらどうだと?!確かに私は優秋に失望した!!だから何だと言うんだ!!」


  そして、その口調も表情も冷たく健に突き刺さる。 「壁」の無い世界で、健はじりじりと後退していく。


「だから何と言う事は・・・ありません、ただ・・・父さんの代わりに・・・謝りたくて・・・」


  健の語尾はだんだんと弱弱しくなっていく。白井の放つ圧力は凄まじい。


「謝る?!・・・やっぱりアイツの息子だな、やる事が読めん・・・」


  「フンッ」と白井は鼻で嘲笑した。


「お前が謝って何になる?!!優秋の生まれ変わりでもあるまい!!」



  その時だ。


『ちょぉっと待ちなさいよぉぉっっ!!!』

「「??!!!」」


  この世界では絶対聞けないと思っていた声がした。

  誰もが(というか、達樹は気絶しているので2人だけだが)その声のした方を振り向く。 声の主は凛々しく、堂々と歩いている。

  1ヶ月ほど前までは無かった、その足で。 その大きな瞳は、真っ先に健をとらえた。


『健、お待たせ♪』

「桜儚・・・?!!」



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