学校の階段!?

父(後編)

14


「え〜?!俺が気絶してる間にそんな事が?!!!」

治療が完了した達樹は、健から全ての事情を聞いて驚いた。

「・・・これで良かったんだよな、健」

うん、と健は頷いた。その顔に、後悔の様子はなかった。

「達樹」
「ん?」
「帰ろうか♪」
「・・・そだな♪」

その瞬間、健の背中に何かが覆いかぶさってきた。

「うわぁぁぁっ?!!!」

体育「1」の健はいきなりその場に倒れこんだ。

「健?!!」
『ちょっとぉぉ!!!もっとしっかりしなさいよ〜!!!』

雪葉の魂が体から抜け、すっかり元通りになった桜儚が健の背中にのしかかってきたのだった。

「お、お〜なぁ・・・ぐるぢ・・・・・・」
『ったく!!アンタって本当ダメねっ!!』

健の叫びを聞いて、桜儚いはよっこいしょ、とその場をどいた。

『でも・・・・・・ま、いいわ』
「・・・な〜に?」
『何でもないわよっ!!ほらっ、帰るわよ!!』
「も〜、分かったよぉ〜・・・」
「お、お〜い!!健!!桜儚さ〜ん!!」

そんなこんなで、3人はこの本の中から出ることになった。

(でも・・・)

あの後の言葉を、桜儚は自分の中に留めておいた。
自然と、顔がにやけてきた。


『でもね、とってもかっこ良かったわよ』



「おや、帰ってきたのか」

気付くと、白髪の美少女がのほ〜っとチョコケーキを貪っていた。 その光景の平和さに、3人は一気に拍子抜けした。

「ケーキかよっ!!」
「ジジィでもスイーツは食べたくなるなる」

雅は笑いつつ、達樹の鋭いツッコミ&チョップをひらりとかわした。

「ケ○タッキーのCM真似てんじゃねぇぇぇぇっ!!!!!」

そんな達樹と雅の戦闘を横目で見ながら、健はそっと部屋を抜けた。

「健君、お帰り」

扉を開けたそこに、坂下がいた。相変わらずの笑顔だ。

「・・・知ってたんですね」
「雅様がな、教えてくれたよ」
「あの、坂下さん・・・白井さんの事なんですけど・・・」

健は言いにくい顔をして話しかけたが、坂下に口を挟まれた。

「知っておったよ」
「・・・え?」

健でも分かったから坂下が知っていて当然、ではあるのだが、やはりその返事には驚いた。

「しかし、白井君は自分で成仏する意思を作り出すのが不可能だと思うほど、 心は冷たく閉ざされておった・・・その氷を、君は融かした」

坂下は笑顔で健の頭を撫でた。

「本当に、凄い子じゃよ」

健はくすぐったい気分になったが、坂下の表情の変化を敏感に感じ取った。

「健君・・・」
「・・・はい」
「先輩の変化を、君は気付いているかね?」
「桜儚の・・・変化?」

「“時”が・・・近づいておる」


健にはその時、これから起こる事を予測など出来るはずもなかった。




第15章 了
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