真夜中、緑ヶ丘町―――。
電線に、一人の人間が腰を下ろしていた。
「お前、絶対感電するって!!」というツッコミも多いだろうが、その人間は正確には「電線に腰を下ろしている」のではない。
「電線に腰を下ろしたように見える」のだ。
周りには、カラス達がぎゃぁぎゃぁ鳴きながら舞っていた。
そのうち、一羽のカラスが人間めがけて飛んできた。
「ご苦労様、ピエール。」
人間はそっと腕を伸ばした。ピエール(♂)はその腕に止まった。
そして、何やら騒がしく鳴いた後、人間はにやりと笑った。
「…そう、分かったよ。もうお眠り。」
そう言って、人間はピエールの首筋を撫でる。
すると、ピエールはカラスから1枚の札へと変わった。
「おや…もう日が昇る。」
人間は東を見た。もうそこまで太陽は出掛かっている。
「さて、もう行かなきゃ。」
ひとりごつと、人間はふわりと宙に浮き、そのまま太陽を背にして消えた。