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学校の階段!?

第6章 狙われた桜儚(前編)

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「おはよ〜…」

 それから1時間後、五寸健はいつも通りあくびしながら起きてきた。

「お〜っす♪もう飯出来てるぞ〜。」

達樹は自分には少し丈の短いエプロンをしていた。今日の朝ご飯当番だ。

「あ、目玉焼きふぁ〜…」

もう1度大きなあくびをして、健はテーブルの上にあった新聞を広げた。
いつも通り、トップ記事、3面記事の順で読み進めていく。
そして、地方版にさしかかった所で目を留めた。

「あ、達樹〜。見て見て〜。」

「ん?どした?」

エプロンを外しつつ、達樹は新聞を覗いた。

「…っと、何々…『大羽高校、今日からクォーター高校生を受け入れ』?」

そんな話あったっけか?と思いながら、記事を読み進める。


『市立大羽高等学校は本日から英国聖アーノルド学園高等部在学中のモニカ・撫子=シュパイヤーさん(15)を特別留学生として半年間受け入れる。モニカさんは祖母を日本人に持つクォーターで、聖アーノルド学園理事長であるフランク=アーノルド氏(78)の孫でもある。…』

…へぇ〜。」

達樹は残りを黙読すると、新聞から顔を上げた。

「凄いよね〜、留学生か〜。カッコいいな〜。」

健はまだ新聞から目を離さない。

「…なぁ、健。」

「ん?何?…あ、お味噌汁冷めちゃうね〜。」

そう言って健は立ち上がろうとしたが、達樹は彼の肩に手を置いて、座らせた。

「…違うの?」

「お前、昨日までに留学生が来るって聞いてたか?」

健はしばらく考えて、首を横に振って斜めに傾けた。

「そ〜いえば…生徒達には前もって知らせるはずだよね〜?」

「…何か裏があるぞ、きっと。」

達樹は健を見た。健の目は不安の色をしていた。

「…ほら、朝飯にしよ〜ぜ!!大丈夫だって!!俺達には関係無いさ!!」

わざと明るい声を出した。

「…うんっ!!」

健はいつもの笑顔に戻った。

大丈夫、達樹がそうやって安心させてくれるから…。
そう思いながら食卓に着いた。

「味噌汁入れるな〜。」

「うん♪」

達樹は味噌汁をよそいながら、何故か黒いモヤモヤを感じていた。






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