学校の階段!?

第7章 狙われた桜儚(後編)

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達樹は真剣な目をしながら撫子に近づいていく。

「なぁ、撫子。」

「な、何だ…」

そして、次の瞬間撫子は達樹にきつく抱き締められていた。

「タ…ツキ……?」

撫子は頭の中が真っ白になって、それ以上何も言えなかった。


「……。」


「え?…それは…本当?」


達樹の低い呟きを撫子はハッキリ聞き取った。

「ったりめ〜だろ。何で冗談で言わなきゃいけねぇんだ?」

そう言うと、達樹は撫子を離し、歩き出した。

「健、帰ろうぜ〜。俺、腹減った…」

健と桜儚の頭の上には「?」がめいっぱい飛び回っていた。

「た、達樹?撫子さん、死なないんだね?」

健は先程の達樹の行為に思わず赤面しちゃって尋ねた。

「おう!!な?」

ニカッと笑って、達樹は撫子の方を振り返った。

「え?…あ、あぁ……。」

撫子は赤面しながら頷いた。隣の坂下はにこにこしていた。

「では、明日からは四人とも仲良くな。」

「…明日?」

撫子が坂下を見上げると、達樹が金髪の頭をこづいた。

「ば〜か、明日も学校あんだろうが。」

「そうだよ〜、明日は英単語のテストだよ〜。」

健が笑顔で後ろから言うと、達樹が急に振り返った。

「げっ!!忘れてた!!ほら、帰って勉強だ!!」

「え〜、達樹やらなくても出来る…」

「俺は英語は苦手だ!!」

撫子はそんな二人のやりとりを聞いていてくすくす笑い出した。

「あ、何笑ってんだよ!!」

「いや…二人とも、面白いなと…あははは…」

それは、今までに見た中で最高の撫子の笑顔だった。

「撫子さん、今度英語教えてよ〜。」

「お、そうだな。本場の人間に教えてもらうのが一番だ!!」

「分かったよ、でも単語は覚えなきゃどうしようもないぞ?」

「わーってるよ!!」

撫子が笑った。健も達樹も笑っていた。
桜儚は「まったく」と言いながら、坂下は無言で微笑んでいた。

「じゃあ、また明日な!!」

「ばいば〜い♪」

去り行く達樹と健の後姿に、撫子は小さく…小さく呟いた。

「…ありがとう。」

「良いのだね、このまま先輩を除霊しないで。」

坂下は尋ねた。撫子は二人の背中を見ながら答えた。

「私は…『私』を必要としてくれる人の為に生きたい。たとえ、『除霊者』を敵に回す事になろうが。」

坂下は微笑んで頷いた。
撫子の心の中では、達樹の呟きがずっと再生され続けていた。


「お前に、俺の傍で生きて欲しいんだ。」




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