学校の階段!?

第9章  小村雑貨店

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  あっという間に7月に入った。
天気はここの所毎日快晴で、「もう梅雨明けかも」と天気予報は言い始めている。

  実際、ジメジメした暑さは少しずつ緩和されているようだ。
そんな初夏の大羽町内を二人の青年は歩いていた。

まだ12時を少し回ったぐらいの時刻である。


「達樹ぃ〜、僕は今回も赤点の危機だよぉ〜…」

  ヤバイよぉ〜、といつもの間延び〜声でのたまうのは牛乳瓶底眼鏡を掛けたやせ細少年、 五寸健である。
隣にいる青年がデカいのと、健自身小さくて少し童顔なのが組み合わさって、彼は中学生にしか見えない。

「大丈夫だって、この前赤点無かったじゃねぇか。」

終わった事は気にすんなよ、と隣のスポーツマン系美青年は健の肩をポンッと軽く叩いた。山梨達樹である。

「あぅ〜…」

  健はため息をついた。本日何度目だろうか。
今日で1学期の期末テストは終了し、生徒達は午後から補習の3年生以外午前中で下校となる。

  そのせいか、今健達のいる大羽町商店街には大羽高校の制服を着た人々がそこらじゅうにいる。 ついさっきなんか、美味いと評判のラーメン屋内を覗いたら全員知り合いだったという感じだ。


「お腹すいたね〜…」

ヘロヘロと歩く健の腹の虫が鳴った。

「だな。早いとこ安売りトイレットペーパー買って帰ろ〜ぜ。」

達樹の腹の虫も盛大に混声三部合唱した。


  そう、今日二人がこの商店街に珍しく立ち寄ったのは、 ここにある雑貨店でトイレットペーパーの安売りをしている為である。 達樹が朝広告を見つけ、健に知らせたのだ。彼は結構主婦っぽい。

「お、アレじゃねぇか?」

少し歩くと達樹がデカデカと看板を掲げた店を発見した。

『小村雑貨店』

ビンゴである。

  建物自体はかなり老朽化しているが、客の入りはすこぶる良い。 メガホン持って、小太りの気さくそうなオッサンが叫んだ。

「さーぁ、本日大特価のトイレットペーパー!!もうすぐ完売でーす!!」

「行こう、達樹!!早くしないとなくなっちゃう!!」

健がどうやらトイレットペーパー売り場を発見したようだ。

  かなりの数のオバハン達がものごっつい形相で群がっている。
毎度毎度スーパーのタイムバーゲンにも顔を出す二人だが、この勢いにはいつもながら圧倒される。

そんな恐怖を消し去り、二人は猛ダッシュで戦場へと突入していった。



それはさながら、RPGの勇者達のようだったと人は語る。




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