学校の階段!?
第9章 小村雑貨店
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真夜中、大羽高校内―。
いつもの踊り場から、いつもの声が聞こえてくる。
それは唄だった。
穏やかなメロディーの唄だ。
いつものようにワンフレーズだけ歌い終わると、桜儚は階段に腰を下ろした。
「早くこの続きが歌いたいわ…」
この曲は、彼女が生きている頃からずっと歌っている曲だった。
音感の無い“アイツ”が唯一ちゃんと歌える曲、
そして、彼が自分に教えてくれた最初で最後の曲。
「健は…この唄知ってるかしら?」
どうして「健が」かは分からないが、桜儚はそう思った。
その後ろ姿を月が照らしていた。
そして桜儚自身は気づかない、
自分の姿がだんだんハッキリと影を作っていくことにー――。
夜は更けていった。
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