学校の階段!?

第9章  小村雑貨店

10




  真夜中、大羽高校内―。

いつもの踊り場から、いつもの声が聞こえてくる。

それは唄だった。

穏やかなメロディーの唄だ。


いつものようにワンフレーズだけ歌い終わると、桜儚は階段に腰を下ろした。

「早くこの続きが歌いたいわ…」

この曲は、彼女が生きている頃からずっと歌っている曲だった。

音感の無い“アイツ”が唯一ちゃんと歌える曲、

そして、彼が自分に教えてくれた最初で最後の曲。


「健は…この唄知ってるかしら?」

どうして「健が」かは分からないが、桜儚はそう思った。

その後ろ姿を月が照らしていた。

そして桜儚自身は気づかない、

自分の姿がだんだんハッキリと影を作っていくことにー――。




夜は更けていった。




前ページ<=>次ページ(序章へ戻る



序章へ戻る
トップへ戻る