学校の階段!?
第9章 小村雑貨店
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そうだよね、と健は合成で作ったような笑顔をした。眼鏡を取ると、大きめの瞳がはっきりと見える。
「でもさ、桜儚さんに今“想い人”より好きな人が出来てても不思議じゃねぇよ。
ずっと学校にいるわけだし。」
達樹はそれ以上、何と言って良いか分からなくなった。健は夕日の方を見つめている。
何処を見るともなし、ただ夕日だけを。
彼が初めてこの優しすぎる少年に出会った時と同じ目をしていた。
達樹はいてもたってもいられなくなり…。
バシッッッ!!!
「い、痛いよ〜!!!達樹、何するの〜!!?」
大きな手のひらで、健の背中を思いっきり叩いた。
「おらっ、何しょぼくれた顔してんだよ?!!もうすぐ夏休みだぞ?!」
ガッハッハと達樹は豪快に笑った。
「それに…桜儚さんを絶対成仏させるんだろ、な?」
そして、急に優しい顔になった。いつもみたく、目を少し細める。
「お前が元気じゃねぇと、桜儚さんも元気なくなるぞ?」
「…うん、ありがとう。僕、頑張るよ〜。」
健はえへへ〜、と笑った。合成じゃない、本物の笑顔だった。
電車がゆっくりとプラットホームに入ってきた。
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