学校の階段!?

見える桜儚

2

  大羽高校は原則として2年から補習がある。 つまり、1年は宿題さえやれば後はご自由にのワンダーランドなのだ。 部活をやっている生徒はお盆まで毎日のように学校へ来るが、帰宅部は家でダラダラするもよし、 出かけるもよし。

「ねーねー、山梨君は夏休みどーするの?」

  女子グループがきゃあきゃあ言いながら達樹の席へ近づいてきた。 どうやら遊びに誘うつもりらしい。 達樹は笑顔で言った。

「悪ぃ!!夏休みは健と別荘行くんだ!!な、健?」

健はいきなり話題を振られたが、打ち合わせ通り首を縦に振った。

「そうそう、軽井沢で宿題忘れて遊ぶ予定なんだ〜♪」



  実際、達樹の家は軽井沢と富士五湖全部に別荘を持っている。改めて思うが、すんげぇ金持ちである。 そう言われると女子グループは心底悔しかった。

『何さ、こんなに可愛い私よりも中学生みたいな男の方を取るの?!』
(注:あくまで彼女達は自分が一番可愛いと思っている)

とか罵声の一つも吐いてみたかったが、彼女達は馬鹿ではない。 腐っても大羽高校のエリート集団である。

「じゃあ、学校祭終わったら皆でカラオケ行こ〜よ!!」
「そうそう!!」
「ね、それなら良いでしょ?!」

達樹は元来女が苦手である。このおばはんのような集団攻撃にはいつまでたっても慣れないものである。

「あ〜…え〜っと……」

言葉が出てこない。そんな時、助け舟を出してくれたのは…。

「そ〜だね♪学校祭の後ならテストまで時間もあるし。ね、達樹?」

健だった。
  達樹は少し驚きながらも「あ、あぁ…」と作り笑顔で返事をした。 女子グループは満足したらしく、キャアキャア言いながら巣へ戻っていった。



「ふぇ〜…さんきゅ、健…。助かったぁ……」

  頭をかきながら達樹はため息をついた。モテる男も大変である(羨ましい)。 そんな二人を見て、クスクス笑いながらやって来る影があった。

「相変わらずだな、タツキ。」
「何だ、撫子かよ…」
「あ、撫子さ〜ん♪」

  金髪美少女は微笑を絶やす事なく二人に近づいた。 そういえば教室にはこの三人しかいない事に、健と達樹は気付いた。

「ケン、タツキ。少し用務員室まで来てくれと、サカシタさんが…」

撫子は急に微笑を止めた。二人は顔を見合わせた。




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