学校の階段!?

2

「ほれほれっ、早く荷物を置いてこんか。この白井君夫妻が皆を世話してくれる、 彼らの言う事をよく聞くんじゃぞ」

  そう言って、坂下は横のおっさんをずいっと前に出した。 おっさんは「白井です」と言って一礼をした後、すぐ後ろに引っ込んだ。 どうやら白井さんはこの若い奉公者達を快く思っていないようだ。



(こりゃ、手ごわいおっさんだな…)

  半袖Tシャツにジーンズというオーソドックスな形でまとめたにも関わらず モデルにしか見えない達樹は直感的にそれを悟った。一応この中では一番常識人である。

(そ〜か、白井さんはきっと下の名前が女の子っぽいから自分から言わないんだな〜。 白井さんの名前何だろ?『カオル』とか、『ミキ』とかかな〜?)

  高校生なのに短パンが恐ろしいほど似合っている健は白井の態度ではなく、名前ばっかり気にしていた。

(シライさんか…一文字変えるとシラミさんだな…お、jaw(顎)が二つに割れている!! マッキンリーみたいだ!!fantastic(素晴らしい)!!)

  ノースリーブの黒いワンピースに身を包む撫子はかなり失礼な事を考えている。

『あんたら…またくだらない事考えてるわね…』

  いつも通りのセーラー服姿の桜儚は二人の様子を見てため息をついた。



  その時、ふと何処からかの視線に気付き、桜儚は辺りを見渡した。 白井が彼女をその細い目で見ていた。

(何、この寒気…?!)

桜儚が少しビクッとすると、白井は静かに目線を戻した。明らかにそれは冷たい目だった。

「では、部屋へ案内しますのでこちらへ」

白井はそう言うと、そそくさ自分だけ庭園のど真ん中に建っている巨大な建物の中へ消えていった。

「あ、ま、待って下さい〜!!」
「ったく、あのおっさんイイ根性してんな!!」
「客に不親切な者は世界中で嫌われるぞ」
『じゃあね、坂下。また後で』
「はい、先輩方もお気をつけて」

ぴーちくぱーちく言いながら健達も白井の後を追って建物の中に入っていった。



「さて、わしも…」

  坂下はそうひとりごつと、目線を鋭くして空を見上げた。
そこにはただ、小さな雲の塊が一つ漂っているだけだった。

「…気のせいかのぅ…」

  やれやれ、と頭を掻いて大羽神宮総代は建物の中に入っていった。
その雲の塊が徐々に人の形になるのも知らずに。






前ページ<=>次ページ



序章へ戻る
トップへ戻る