学校の階段!?

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「こちらが五寸様と山梨様のお部屋になります」

  白井は渡り廊下を5本渡った一番奥の棟の前で止まって、健達の方を振り返らずに言った。

「えっ、僕達の部屋って…この棟全部…ですか?」
「はい」

  驚く健に対しても、白井は振り返らないし素っ気無い。



「え、マジかよ!!凄ぇじゃん!!」

  達樹も健もひたすら感心していた。

  それもそのはず、大羽神宮の境内裏に位置するこの建物は 「ここは何処の高級旅館だ」って言いたくなるほどの広さと造りになっている。

  ちなみに先ほど健達がいた庭園はほんの氷山の一角だった。

  建物の中に入るや否や、靴脱ぎ場は何キロあるんだってぐらい横長だし、 “大広間”と木製の看板が立っている所は襖が閉まっていて中が見えなかったが、 5分ほど歩いてもまだ部屋は続いていた。渡り廊下もなかなか長いし、 途中に見える部屋もその広さだけで一軒家建ちそうなほどだ。

「坂下さん、相当ここに金使い込んでるな…」

  達樹は坂下をあらためていろんな意味で凄いと思った。



「あの〜、白井さん。ここはどういう目的の建物なんですか?」

  健はマスターキーで棟の入り口を開けている白井に尋ねた。 白井は少し手を止めたかと思うと、再び鍵を開けながら言った。

「ここは私達、大羽神宮にお仕えする神霊者達が生活したり、 大羽神宮に縁の深い方々をお招き致しまして、宴を催したり致します建物でございます。 私どもはここを“榊壷殿(さかきのつぼどの)”と呼んでおります」

  何か清涼殿(昔の天皇の住まい)みたいに大層なお名前だ。 ちなみに中庭には榊が大量に植わっている事からこの名がついたらしい。

「これでも築500年だと伝えられております」
「ご…500ですかぁっ?!!」

(戦国時代もいいとこぢゃねぇかっ!!)と達樹は思った。

「はい」



  白井は再び素っ気無く返事をした。すると、白井の目線が初めて自分の横へと動いた。

  その先には棟の柱に頬を寄せて目を閉じる変な眼鏡少年がいた。健だ。




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