学校の階段!?

4



「…何してらっしゃるのですか、五寸様?」

  白井の目がますます細くなって、じと〜っと健を見る目になる。 無表情だった白井のポーカーフェイスに汗が流れた。

  健はふと目を開けると、白井にジト目で見られているのに気付いたが、ニコッと微笑んだ。 白井もこの意味不明な行動にはたじろぐ。

「な、何か…?」
「白井さん、この柱にこうやってもたれた事ってありますか?」
「い、いえ…」



  達樹はこの時、ははぁ…と思ってほくそ笑んだ。

(“健節”が始まったな…)

  この“健節”を達樹が見るのはこれで二回目だ。 初めて達樹がこれを見たのは彼と初めて友達になった時だった。

  いや、正確に言えば…。

(コイツのこれを聞いて、初めて友達になろうって思ったんだっけか…)


そんな事を思いながら、この整った顔立ちの青年は親友の言葉を聞いていた。



「じゃあ、時間があったらもたれてみて下さい♪」
「…は?」

  白井は思考回路が健について行けない。そんな事するのが何の役に立つのか? 正直、白井はその行為が無駄だと思った。が…。

「こうすると、木が僕に囁いてくれるんです。 今までここに来た人達の温もりや想いがこの木には染み込んでいるんですよ。 そして、この木自身の温もりも…。これを感じる事って凄く素敵な事です♪」
「…はぁ…」
「白井さんも、是非やってみてくださいね♪」

  健は物凄く笑顔だ。この笑顔には逆らえない。

  そして、健の言葉には何処か白井の心の奥底を突付いて止まなかった。

「…分かりました。では、機会がありましたら…」

そして、白井は何故か慌てて鍵を全て外し終えた。

「さ、どうぞ中へお入りください」



ニコニコ顔で入る健の背中を見て、達樹は思った。

(白井さん、“健節”が効いたみたいだな…)

少年の言葉に心の奥底を突付かれたのは彼も同じだった。




前ページ<=>次ページ



序章へ戻る
トップへ戻る