「アイツは…テムズは黒魔術を使う為だけに、Satanに魂を売り払ったんだ…」


学校の階段!?

もう、戻れない・・・。

10

  テムズは…いや、サタンは一人の青年の身体を借りてクククと嫌な笑い方をした。


『そこの娘は予とこの男の事を知っておるようじゃな?結構結構…』


  テムズの声とは違う、何とも腹にズシリとくる声だった。

  普通の音を加工したような、この世のものとは思えない音が部屋中に響き渡る。一種の超音波だ。


「僕、黒魔術世界の悪魔とか見るのは初めてだけど…やっぱり『気』の流れは心霊界と変わらないね」


  健は撫子に向かってニコッとしたが、頭の中でこの『気』に似た奴に会ったことがあるのを思い出した。 それは、10年前。満月の晩。そこにいたのは、自分と…。


「…お母さん……」

『ほほ、そちらの儒子(小僧)は母の胸が恋しうなったと見えるのぅ…』


  サタンの嘲笑を健は微笑みで返した。


「いいじゃないですか、もう…会えないんだから」


  サタンは少し面白くない顔をした。彼にとって、人間を悲しみや絶望に陥れるのは最大の快楽なのだ。

『気に食わぬのぅ、その笑顔は…。まぁよい、予の話を聞け。 この男はそこにいる娘が欲しぅて、予と契りを交わした。 そう、こやつは己の貧弱な肉体と精神をこの気高く美しい予に譲りよったのじゃ!!』


  契りを交わす…普通は人間の女性が魔女になる為に、サタンとする行為なのだが、 今回は少しばかり勝手が違った。相手は青年である。しかし、サタンは受け入れた。


「…テムズ…なんて事を…」


  撫子は吐き気がした。


『そして予は契約に従うぞ!!必ずぬしとこの肉体を結び合わせる!!それがこやつの願いじゃ!!』





前ページ<=>次ページ



序章へ戻る
トップへ戻る