「それは違います!!」
サタンは再び眉間にしわを寄せた。声の主は健だった。
『また貴様か…』
「テムズさんは、本当に撫子さんを愛していました。たとえどんなに…
えっと…肉体的なものを求めていたとしても、心から撫子さんを愛していました。
あなたの言っている事はテムズさんの本当の願いではなかった…テムズさんが本当に望んでいたものは、
昔撫子さんがロンドンにいた時のような、二人で仲良く時間を共有することだったはずです!!」
『えぇい、貴様なぞに何が分かるというのじゃ!!』
「分かります!!だって…」
学校の階段!?
もう、戻れない・・・。
11
『・・・えぇい、気に食わぬ!!気に食わぬぞ!!予の力、思い知るが良い!!』
サタンは怒りを爆発させた。スッと手を前に差し出すと、そこから黒い光線が勢い良く放たれた。
「ケン!!」
咄嗟に防御符を出して結界を貼った撫子は後ろを振り向いた。
そんな撫子の心配をよそに、健は撫子のものより強力な結界を貼り、
なおかつ次の術の為の呪文を唱え始めていた。
(さすが…オウナがとり憑くだけの霊力だ…)
撫子はサタンの黒い光線を防ぎつつ、健の凄さに改めて感心した。そして、
「健はお払いをしている時は別人だよ」と達樹が言っていたのを思い出した。
(確かにな…普段のぽわ〜っとしているケンとはまるで別人だ…)
自分が戦った時よりも確実に成長している・・・撫子はそう確信していた。
『・・・撫子さん』
そんな事を考えていると、健が念で話しかけてきた。
『どうした?』
『テムズさん、まだ意識はありそう?』
あまりの突然の質問に撫子は呆気にとられたが、サタンと化した彼を見てみた。
『・・・分からないが、まだサタンに意識を乗っ取られて少ししかたっていない。
おそらくテムズの意識は奥で眠っているはずだ』
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