学校の階段!?
もう、戻れない・・・。
2
『…あのテムズって人、本当に普通の人かしら?』
廊下に出た瞬間、桜儚は呟いた。
「桜儚さん、何か違和感あるの?」
『だって、あの人はあくまでアーノルド家の人間なんでしょ?
その家は除霊者とは何の関係もないわ。なのに…』
「テムズさんは撫子の任務も桜儚の別称も知ってた…」
桜儚の言葉を健が続けた。達樹は何だか嫌な寒気を感じた。
「俺…ここにいたい…」
ぽつりと呟く達樹に、健が背伸びして肩に手を置いた。
「…駄目だよ、達樹。今は」
「健…?」
「今は、僕達が出る所じゃないよ。
撫子さんだって僕達が疑問に思ってる事には気付いてると思うんだ。
だけど、あえて僕達を外に出した。その意味、達樹なら分かるよね?」
健の澄んだ目をじっと見て、達樹は頷いた。健はそれを見て、笑顔になった。
「じゃ、部屋に戻ろう。桜儚も僕達の部屋おいでよ」
『そうね、アンタ達の部屋汚そうだし、私が片付け手伝ってあげるわ』
「あはは〜、当ってるよ〜…」
健と桜儚はそんな言い合いをしながら廊下を歩き始めた。
達樹は閉まった扉に向かって何かを呟き、急いで健達の後を追った。
「撫子、頑張れよ…」
「宜しいのですか、総代?このまま客人をほっておいて…」
大量に植えられている榊の木の陰から白井がこっそり尋ねた。
坂下が彼の足元にしゃがんで隠れている。
「構わんよ、もう少し様子を見よう。彼は…」
すると、笑顔だった坂下の表情が突然厳しくなった。
「ひょっとしたら、『姿』を現さんまま帰ってくれるかもしれんしな…」
「…だと良いのですが…」
白井はその表情に威圧感を覚えながら、客人のいる撫子の部屋の方を見ていた。
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