学校の階段!?

もう、戻れない・・・。

3


「テムズ、何の真似だ?!」


  撫子は健達の『気』が消えたのを確認すると、声を荒げた。 その目には、怒りと疑問と…幾らかの恐れがあるようだ。


「何って…僕は本当に君に会いに来たんだよ?」


  テムズはニコッとして立ち上がり、撫子に近づいた。その指が、彼女の白い頬に触れる。


「や、やめないかっ!!」


  撫子は軽くテムズの手を振り払った。テムズは笑顔のままだ。


「どうして嫌がるんだい?僕は君のフィアンセじゃないか!!」


  撫子はふっと視線を外した。


「…それは、小さい頃の話だろう。私ももうすぐ16だ。結婚の相手くらい、自分で…」

「タツキ君、かい?」


  テムズの声は急に冷たくなった。撫子の顔は赤くなった。


「ま…っ…まだ、私達はそのような関係ではないっ!!」


  しかし、テムズの表情は相変わらず笑顔だ。


「…昔から変わらないね、モニカは。思った事を隠しておけない…ま、そこが可愛いんだけどね」

「テムズ、軽口はよしてくれないか?!これ以上下手な冗談を聞く気は毛頭ない」

「…冗談?」


  一瞬、テムズの顔がこわばった。撫子はそれを見逃さなかった。


「…冗談で言ってるつもりはないな。僕はモニカを愛してやまないんだ。 だから、君が日本に行くと聞いて驚いた。しかも、僕には言えない理由で? 僕はフランク爺さんを問い詰めたけど駄目だった。だから、モロゾフさんに食い下がったんだ!! 君を日本に行かせた本当の理由を!!」




  そして、テムズは“あの日”の話を始めた。





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