(助けて…タツキっっ!!!!)

彼女がそう強く念じた時だった。


学校の階段!?

もう、戻れない・・・。

6


バシッッッッ!!!!!

「撫子ぉぉっっ!!!」


  達樹が思いっきりドアを開けた。そこで彼が目にしたのは、撫子とテムズの見たくない姿だった。


「な…何でここに…?!」


  余りにも予想外の出来事に、テムズは撫子を離した。 これ幸いとばかりに撫子は達樹に駆け寄り、強く彼を抱きしめた。


「なっ、撫子?!!お前…」


  達樹は胸がドキドキするのを実感した。こんなに撫子が近くにいて、彼女が自分を抱きしめている… そう考えるだけで彼の鼓動は一層速くなる。そして知らない間に、 彼もまた彼女をしっかりと抱きしめていた。



「どうして…どうして私の叫びが聞こえたの…?」


  撫子の体は小刻みに震えている。


「…馬鹿だな。好きな女のピンチに駆けつけるのが…男ってもんだろが」


  達樹は笑って、優しく撫子の頭を撫でた。


「達樹、あの後すぐ撫子さんの部屋戻ってったもんねぇ〜?」

『ったく、見てらんないわよね。何このラブラブっぷりは?』


  健と桜儚はニヤニヤ笑いながらのっそり現れた。 しかし、達樹と撫子の二人は周りの冷やかしをも省みず、しっかり二人の世界を構築している。


「撫子…」

「タツキ…もう少し…このままでいさせて…」


  撫子は愛しい男の傍を離れようとしない。


「…しょうがないな。もう少し、だぞ?」


  達樹はそう言って髪を優しく撫でた。


「…うん…」




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