学校の階段!?

もう、戻れない・・・。

8

「…なぜ…何故、僕じゃない?僕はこんなにモニカを愛しているのに……」

  そう何度も呟きながら、だんだんテムズは両手で頭を抱えて変なうめき声を出し始めた。



『な、何?!イっちゃってるの、この人?!』

「やべっ、精神薄弱者だったのか?!!」


  桜儚と達樹は感じなかったみたいだが、健と撫子は顔色が悪くなった。


「…達樹、桜儚、逃げて…」

「…健?」

「いいからっ、早く逃げてぇぇぇっ!!!」


  普段こんなに大声を出さない健が物凄い剣幕でそう怒鳴った。 達樹と桜儚は目を丸くしつつ、慌てて障子を開けて中庭へ逃げていった。


「…ケン、お前も逃げろ…。“これ”は私が食い止める…」


  撫子は震えながらそう小声で言った。が、健はそんな撫子の方を見てにっこり笑った。

「何言ってるの、君の命はこんな所で終えていいものじゃない。 …撫子さん、生きて。生きて、テムズさんを助けよう」


  撫子はその言葉を、しっかり心で受け止めた。


「…ありがとう、ケン」

「お礼を言う相手は僕じゃないよ、達樹だよ」


  そうだ…と撫子は思った。


(前にもそんな事、言われたっけな…)


  達樹とは違う健の「愛」を、撫子は感じた。 そんな事をしている間に、テムズの体はどんどん姿が変わっていく。


「あ…あぁ……うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」


  そんな悶絶の雄たけびをあげたテムズの背中から、赤と黒の大きな翼が生えた。




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