学校の階段!?
父(中編)
3
健と達樹は、大羽神宮のある部屋にいた。
「ここは…」
「俺達が修行メニューを作った所じゃねぇか…」
何処までもだだっ広い宴会場のような部屋は、紛れも無い大広間だ。
そこに、2人の男がいた。1人は優秋、もう1人は…何処かで見たことが…。
「白井さんだ…」
そう、今とは外見がほとんど違うが、よく見ると白井だった。
視線の冷たさが相変わらず…いやいや、これは過去なのだから、「今と変わらない」と言う方が正しい。
「2人とも、何してるんだろ…?」
2人はその大広間に立っていた。その前には一人の初老の男がいる。
「「・・・坂下さん!!」」
健と達樹は思わずハモってしまった。少し若いが、確かに坂下がそこにいる。
「優秋君、白井君、どうだね?この大羽神宮は」
「素晴らしい所ですね、ここで奉公したら霊力が上がるのも分かります」
白井は丁寧にそう答えた。坂下も笑顔で頷く。
「すっごいです!!」
そんな中、目をキラキラして感激の声を上げたのは優秋だった。
白井の目つきは「何だコイツ?!」という、異星人を見る目になっていた。
「広くて人が多くて…!!坂下さんってビッグな事が好きなんですね!!」
「そこか!!」
白井の絶妙なまでのツッコミが入った。
「白井さんもツッコミするんだね〜」
「そりゃ、人間だからな」
そんな子供みたいな優秋の発言に、坂下は白井の時よりも笑顔になった。
いや、むしろ本当の笑顔はこちらだろう。
「優秋君には今までずっとフラれ続けていたからなぁ…会えて光栄だよ」
「いや〜、生憎僕には最愛の雪葉ちゃんがいますからねぇ〜」
そんなほのぼのしたやりとりではあるが、二人とも裏には多大な神霊者達の妨害があったことを知っている。
もっとも、優秋の方は『奉公<雪葉』という方程式は本当に絶対的であったようだが。
「…優秋君、だっけ?君は何処の神社出身なんだい?」
白井はこの時が初対面らしい。少し面白くないという顔をして尋ねた。
「五寸釘神社だよ!!小さい神社だけど、結構歴史はあるんだ〜♪」
優秋は笑顔で答えた。やはり親子なのだろうか、健と笑顔がそっくりだ。
「五寸釘…あぁ、あのボロい神社か」
その答えに、白井はクスリと嘲笑した。
「え?そうかな、ボロいかな?楠がすっごいデカいよ♪」
しかし、優秋はその嫌味さえも跳ね返す。
「…う、うちは白龍神宮だ!!日本でも有数の神宮だぞ?!」
白井はその優秋の反応が意外で一瞬うろたえた。
しかし、「自分の方が有力な家系だ」という主張だけはしっかりと忘れていなかったようだ。
「えっ、白龍の出身なの?!凄いな!!僕、有名な神宮の人に会うのって初めてだ!!よろしくな!!」
・・・もう、何と言うか・・・。
「さすが健の父さん…」
「お父さん嬉しそうだね〜♪」
白井は呆気に取られた顔のまま、優秋と握手をした。
坂下はやっぱり、ニコニコしてその様子を見ていた。
序章へ戻る
トップへ戻る