学校の階段!?

父(中編)

5

  場面は、再び五寸釘神社へと変わる。

  優秋は神主姿、少し齢を重ねたようだ。隣には、お腹の大きい雪葉がいた。


「優さん♪もうすぐパパになるのね♪」

「雪葉ちゃんがママかぁ・・・可愛いママだ♪」


  雪葉は照れてお腹をさする。


「・・・お母さん・・・」


  そうだ、自分があの中にいた。こんなに愛し合っている幸せな二人の間に、自分は生まれた。 幸せだった。しかし、その幸せはもう、ない。

  涙が出てきた。


「健・・・」

「・・・あっ、だ、大丈夫!!ちょっと・・・目にゴミが・・・」


  達樹の言葉に健はハッとして、慌てて目を擦った。

  その時、玄関から声がした。



「優秋、いないのか?」


  優秋はその声にハッとして、慌てて玄関へと向かう。


「優さん?ど〜したの?」


  雪葉はゆっくり歩きながら問う。優秋は振り向き、満面の笑みで答えた。


「ライバルが来た!!」


  玄関に立っていたのは、相変わらず目つきの鋭い男だった。


「久しぶりだな、近くまで来たんで寄ってみたんだ」


  白井は鋭い目つきを精一杯和らげた。


「もう4年か?!早いなぁ〜!!」


  優秋は上がるよう催促し、白井は靴を脱いだ。その時・・・。


「優さん?こちらは?」


  白井は廊下を歩いてきたその女性に目を見張った。 栗毛色のロングヘア、大きくて吸い込まれそうな瞳、そして、雪のように白い肌――。


「あぁ、そっか。会うのは初めてだっけ?こちらは・・・」

「・・・ユキ?」


  優秋の紹介を遮って、白井はその名前を呼んだ。


「「え?」」


  優秋と雪葉の声が重なる。


「ユキだろ?!・・・ほら、俺だよ!!君のお父さんの店によく来てた・・・」


  白井は必死に自分をアピールする。しばらくして、雪葉はようやく気づいた。


「・・・あぁ〜!!シロ君?!」

「そうそう!!久しぶりだなぁ!!」

「久しぶりね〜♪へぇ〜、シロ君と優さんは知り合いだったんだ!!」


  2人は挨拶を交わし、優秋だけがポカンとしている。


「雪葉ちゃん・・・白井・・・知り合い?」


えぇ、と雪葉が答えた。


「うちのケーキ屋さんの常連さんだったの♪」




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