学校の階段!?

父(中編)

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  白井の実家、白龍神社は五寸釘神社のある緑ヶ丘町から少し離れた田舎町にある。 しかし、白井は雪葉の父親が作るケーキを買いによく緑ヶ丘町にやって来ていた。 雪葉の父は有名なケーキ職人で、ケーキの味がとても美味しかったというのも理由の1つなのだが、 白井がそこまでしてケーキを買いに来るのにはもう1つ理由があった。


「いらっしゃいませ〜♪」


  その可愛らしい顔と声で接客のお手伝いをしている、幼少時代の雪葉に淡い恋心を抱いていたのだ。 毎日ケーキ屋に顔を出すようになってから白井と雪葉は仲良くなった。


「あれ?それなら僕と白井が会っててもおかしくないのにな〜??」


  確かに、優秋と雪葉は幼馴染なのだから不思議ではない。


「優さん、あの頃義父様と一緒に放浪の旅に出てたでしょ〜?」

「あぁ!!あの時だったのか〜!!」


  そう、優秋は小学校低学年の時代、父・顕彰と一緒に各地を放浪していた。 小学校から自宅に連絡が入ったが、当時まだ元気だった優秋の母は、


「あらあら、学校で学ぶお勉強も大事ですけど、かわいい子供には旅をさせなくてはいけませんわ?」


と笑顔で切り返した。

  五寸家は父も凄いが、母も凄い。


「その後シロ君は私立の全寮制の学校に行かなきゃいけなくなってうちに顔を出せなくなっちゃって・・・それっきりだっけ?」


  そうだなぁ、と白井は言った。


「そうだったのか〜、世間って狭いなぁ・・・」


  優秋がしみじみ感慨にふけっていると。


「ユキ、お腹大きいけどひょっとして・・・」


  白井は気になった事を聞いた。実は、その初恋は今も続いていた。


「えぇ、優さんとの愛の結晶なの・・・♪」


  雪葉は照れながらお腹をさすった。その姿に、白井は頭が白くなった。


「・・・そ、そうか・・・おめでとう、優秋、ユキ」

「ありがとうな白井!!」

「ありがと、シロ君♪」



・・・あぁ。
君の隣で微笑むのは、
ワタシデアレバナオシアワセダッタロウニ・・・。



  その日、白井は優秋と少し仕事関係の話をして、 顕彰も交えて一緒に夕食を食べ、何事もないかのように去る・・・はずだった。


「・・・なぁ、白井?」

「ん?」


  神社を出ようとした時、優秋が後ろから走ってきて捉まった。


「・・・好きだったんだな、雪葉ちゃんのこと」


  白井は少しピクリとした。


「・・・ばれたか」

「ばれるよ、そりゃ・・・あんなに嬉しそうに彼女と喋ってるんだもん」


  あはは、と優秋は苦笑いをした。


「・・・もう、昔の話だ。今はユキとお前が幸せなら、それでいい」


  白井はふっとそう言った。そうだ、こいつなら…ユキを幸せにしてくれる。

「・・・私に笑顔をくれた男だしな」


「?何か言ったか?」


  優秋の問いに、白井は笑顔で「何でもない」と答えた。


「ユキを幸せにしろよ」

「勿論だ!!」


  そうだ、優秋ならきっと・・・私以上に・・・。




  しかし、その願いは5年後、脆くも崩れ去る。


「・・・死んだ?・・・ユキが・・・・・・?」




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