学校の階段!?
父(中編)
7
「・・・死んだ?・・・ユキが・・・・・・?」
雪葉の訃報に、白井は愕然とした。
「そんな、どうして?!!!」
五寸釘神社の中に聳え立つ古い一軒家には、葬式用の幕が張られていた。
「何でも、蔵の中で血まみれになって倒れていたとか…」
「いやぁねぇ、強盗かしら…?」
「それが、健君が関係してるらしいのよぉ…」
「やっぱりあの子、変な子なのね…怖い怖い」
近所の奥様方の会話を白井は耳にした。
(…健君が…?)
そして、白井は優秋の所へと赴く。
「健の母さんの死因って、あの…」
「うん、僕の『力』が暴走しちゃったやつ…」
達樹はこの頃はまだ緑ヶ丘町にはいない。その真相を知ったのは、つい数ヶ月前だ。
「白井さん、相当胸中複雑だな…」
達樹はそれ以外言葉が出なかった。健もまた、頷く以外出来なかった。
「どういう事だ優秋?!!!!」
白井は喪主の顔を見るなり、胸倉を掴んで柱にその体を押し付けた。少し鈍い音がする。
「・・・すまない、僕が・・・もっと早く帰ってきていれば・・・」
呼吸も絶え絶えに、優秋は謝罪した。
「お前は・・・お前は私の気持ちを知っていた!!だから、約束した!!」
「ユキを幸せにしろよ」
「勿論だ!!」
「勿論だ!!」
「あの約束は・・・あれは嘘だったのかよっっ!!!!」
胸倉を掴む力を緩めない白井の目から、一筋の涙が零れ落ちた。
「・・・すまない、本当に・・・すまない・・・」
優秋はただただ、そう言うしかなかった。お互い、やりきれない気持ちで一杯だった。
何を責めればよいのか。
『力』を持って生まれた健を責めるのはかわいそうすぎる。
では、何を?
早く帰ってこなかった優秋を?
健を探しに行った雪葉を?
偶然満月の日に地上にやってきたあの霊を?
誰も、何も責められなかった。
偶然に偶然が重なった。それは、運命だったのかもしれない。
そう思うと、涙が止まらない。
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