学校の階段!?
父(後編)
11
たった一人、親友ともライバルとも呼べる男がいた。
でも、そいつは約束を守れなかった。
でもそれは、もっと大事な物を守るためだった。
言ってくれれば良かったじゃないか・・・。
なのに、そいつはあっさり死んでしまった。
大事な物を守りながら。
“鉄の仮面”から、雫が零れ落ちた。
「私は・・・私は・・・自分の事しか考えてなかった・・・。
きっと私だったら、この世界を死なせていた・・・」
後悔。苦悩。そればかりが彼の周りを纏っているという感じだった。
桜儚の姿をした雪葉が、そっと健に近寄る。
「健・・・あなた、優さんの霊を・・・?」
ううん、と健はかぶりを振った。
「ただ・・・父さんは僕より何十倍もまっすぐな人だったから・・・」
雪葉は優しく笑った。
「今のあなたみたいだったわ、私が愛した優さんは・・・」
そう、健が最後に見た父は、とてもまっすぐな笑顔と目をしていた。
「ユキ・・・健君・・・」
白井は土下座した。
「し、白井さ・・・?!」
「すまなかった・・・!!私の勘違いで・・・私の・・・せいで・・・」
それ以上は、言葉にならなかった。たった一人の過ちで、親友が死んだ。
そして、大切な人の家族も苦しむことになった。
「白井さん・・・」
健はしゃがんだ。そして、手を出す。白井の体が一瞬、ビクッとした。
その手は白井の顔の前で止まった。
「立ってください、土下座なんかしないで・・・」
顔を上げた白井の目に映ったのは、健と雪葉の優しい笑顔だった。
「どうして・・・どうして責めないんです・・・?健君は辛い思いをたくさんした・・・」
「だって、白井さんだってたくさん辛い思いをしていたじゃないですか。だから、おあいこですよ」
どうして、そこまで優しく出来るんだ・・・君達一家は。
白井は自然に、健の手を取った。
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