学校の階段!?

父(後編)

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たった一人、親友ともライバルとも呼べる男がいた。

でも、そいつは約束を守れなかった。

でもそれは、もっと大事な物を守るためだった。

言ってくれれば良かったじゃないか・・・。

なのに、そいつはあっさり死んでしまった。

大事な物を守りながら。



ぽたり。

“鉄の仮面”から、雫が零れ落ちた。

「私は・・・私は・・・自分の事しか考えてなかった・・・。 きっと私だったら、この世界を死なせていた・・・」

後悔。苦悩。そればかりが彼の周りを纏っているという感じだった。
桜儚の姿をした雪葉が、そっと健に近寄る。

「健・・・あなた、優さんの霊を・・・?」

ううん、と健はかぶりを振った。

「ただ・・・父さんは僕より何十倍もまっすぐな人だったから・・・」

雪葉は優しく笑った。

「今のあなたみたいだったわ、私が愛した優さんは・・・」

そう、健が最後に見た父は、とてもまっすぐな笑顔と目をしていた。

「ユキ・・・健君・・・」

白井は土下座した。

「し、白井さ・・・?!」

「すまなかった・・・!!私の勘違いで・・・私の・・・せいで・・・」

それ以上は、言葉にならなかった。たった一人の過ちで、親友が死んだ。 そして、大切な人の家族も苦しむことになった。

「白井さん・・・」

健はしゃがんだ。そして、手を出す。白井の体が一瞬、ビクッとした。

その手は白井の顔の前で止まった。

「立ってください、土下座なんかしないで・・・」

顔を上げた白井の目に映ったのは、健と雪葉の優しい笑顔だった。

「どうして・・・どうして責めないんです・・・?健君は辛い思いをたくさんした・・・」

「だって、白井さんだってたくさん辛い思いをしていたじゃないですか。だから、おあいこですよ」

どうして、そこまで優しく出来るんだ・・・君達一家は。

白井は自然に、健の手を取った。




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