学校の階段!?

父(後編)

12


その時。

白井の背後からまばゆい光が放たれたかと思うと、そこに1つの大きな“門”が現れた。

「これは・・・!!」

それは、3年前にこの世に現れたのと同じもの。
驚く健と雪葉を尻目に、白井は恐怖に引きつった顔をした。

「禁術のせいだ・・・私が禁術を使った“代償”が来た・・・!!」

“門”が開く。中から無数の魑魅魍魎達が溢れ出てきた。

「逃げろっ!!健君!!ユキ!!」

白井はそう叫んで、健と雪葉を押した。

「シロ君っ!!あなたも・・・」

雪葉の声に白井は小さく笑って、首を横に振った。

「これは“罰”だよ・・・君達を悲しませた、重い“罰”だ・・・」

魑魅魍魎の塊は白井を狙って、恐ろしい勢いで白井に迫ってくる。 白井は目を閉じ、そして・・・笑った。

「ありがとう・・・健君、ユキ・・・」
(私にはもう、死ぬことしか残されていない・・・)

彼は死を受け入れ・・・ようとした。しかし、その時はいつまでたっても訪れない。

(・・・おかしいな・・・)

白井は目を開けた。すると、そこに広がる光景は必死に魑魅魍魎達を駆除している健の姿だった。 魑魅魍魎達は恐ろしい勢いだというのに、健が彼らを“闇”に還すスピードはそれに追いついている。 いや、それをも上回るスピードだ。

「健く・・・どうして!?逃げろと言ったはず!!」
「逃げられませんよ・・・」

健は魑魅魍魎達を還しながら、白井の方を向いてにっこり笑う。

「だって、僕は白井さんに生きていて欲しいから・・・」

白井は、目を見張った。健のその笑顔は、十数年前、初めて見た“笑顔”と重なった。

「それに、白井さんだけじゃないです」

そう言って、健はちらりと横を見た。そこにいたのは、雪葉(桜儚)と気絶した達樹。

「僕には、大切な人がたくさんいます。それを、守らなきゃいけない・・・」
(・・・親が親なら、息子も息子か・・・)

そして、フッ、と笑った。

「健君・・・私は、生きていていいのか?」
「当たり前です♪」
「・・・優秋に・・・謝らなければな」
「僕もです・・・」
「?何でだ?」
「父さんがそんな辛い目に遭ってるなんて知らずに、腑抜けていると少しでも思ってしまったから ・・・それに・・・白井さんにも、色々失礼な事を言ってしまった・・・」

白井は、健という人間につくづく感心してしまった。この心の純真さは、 まっすぐさは何なのだろう。父を殺してしまった自分への温かい言葉は・・・。

(優秋・・・お前が残してくれたものは・・・)

本当に、美しいよ。すべてが、な・・・・・・。

そして、白井はしゃきっと胸を張って、健の加勢に向かった。




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