学校の階段!?
父(後編)
8
『おぬし、神霊者だのぅ?しかもとてつもない霊力持ちじゃ…。
素晴らしい、我の望みを叶えるにはそなたが最もふさわしいぞえ…』
男性はそう言うと、そっと優秋の顎のラインを指でなぞった。
『器量もなかなか良いしのぅ…』
「光栄だよ、平安の世から女を惑わしては世界に厄災をばらまいていた
伝説の妖狐に会えて誉めて貰えるなんて…」
『ほほ…我の事を知っておったとはのぅ…愛い奴じゃ』
「有名だよ、大羽神宮の神主さんがアンタを“闇”の奥底に封印したって聞いてたけど…」
『あのような結界、千年もあれば十分破れるぞえ。我をあなどうては困るのぅ』
美青年はそのしなやかな体を優秋に絡み付けた。
「とり憑くつもりか?だけど、僕に憑いてもいい事はないよ…」
『ん?何故じゃ?』
「アンタが悪さしないように、常に抑えてるからね…どうせこの世界を支配する気だろ?昔と同じように」
『当たり前じゃ、我等はこの“光”の世界を欲しておる。
“闇”の世界はそちらにくれてやるわ。そして、永久に“闇”にさ迷うが良い!!』
焔のその言葉に、優秋は笑った。
『な、何がおかしいのじゃ?!』
「そんな事させるもんか、僕が守ってみせる…」
そう言うと、優秋はとっさに印を組んだ。不思議な光が焔と優秋を包む。
『ふん…己の強大な霊力を使って我をおぬしの中に封じ込めようという算段か…』
面白い、と焔はせせら笑った。
「勝負だよ、僕が生きてる間に…アンタを絶対封印してみせる!!
絶対に、アンタの思い通りになんかさせない…!!」
焔は、その光に包まれながら不敵な笑みを見せる。
『受けて立つぞ、若き神霊者…しかしのぅ…この“光”の世界は人間によって腐敗しかけておる。
我の手にかかればこの世界も良くなるであろうに…』
「分かってるよ、そんな事…」
焔に光の矢が次々に刺さる。
『何…?では、おぬしは何故この世界を守る…?』
「僕が本当に守りたいのは…“光”の世界じゃない…」
そして、その言葉を聞きながら焔は光の矢に同化していった。
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