学校の階段!?

父(後編)

9

「僕が本当に守りたいのは…“光”の世界じゃない…」

そして、その言葉を聞きながら焔は光の矢に同化していった。

「雪葉ちゃんっていう、世界一大切な人だよ」



その言葉を雪葉はしっかりと、聞いてしまった。




「優さんは、その日からどんどん食欲が落ち始めたわ。 その妖狐を抑えるだけで全ての霊力を使ってしまっていて、 お祓いとか他の仕事を出来る体じゃなかった。 シロ君が訪ねて来た時は、やっと一番辛い時期を乗り越えた頃だったの。 そして、優さんもやっと余分な霊力が出てきたんだけど・・・」

「・・・どうしたの?」

言葉に詰まる雪葉を健がうまく促す。

「・・・優さんに憑いていた妖狐が新しい力を生み出したの。 封印された状態で好きな場所に“道”を作れる力を・・・優さんはね、 毎日出かけて行ってはその“道”を塞ぐ作業を行っていたの。 妖狐の方も作れる“道”の数は決まっていたから・・・」

「しかし、いたちごっこではないか・・・」

「優さんは、それでも一生懸命だった・・・毎日“道”を塞ぎ、 夜遅くまで霊力の向上の修行をして・・・」

信じられない、という顔を白井はした。 雪葉の言葉を疑いたくはなかった。しかし、彼は優秋の家を訪問した時、 優秋からひとかけらもそんな事は聞かなかったし、霊力の放出だって微塵も感じられなかった。

「優秋は・・・そんな事をたった一人でしていたのか・・・?!」

妖狐“焔”といえば、白井も知らないはずはない。 彼の妖気の強さは並大抵ではないことぐらい、その伝説を聞けば容易に想像出来る。

「でも、優さんは確かにそれをしていた…夜中に目が覚めると、 優さんはうなされているの。そして、たった一つの言葉だけを…繰り返す…」


「負けない…焔、アンタには負けない…!!」




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