学校の階段!?
第16章 久しぶり。
3
達樹も健も、坂下が神霊者らしい事をするのを見るのはこれが初めてだった。
いつも用務員スタイルで草を刈ったりお茶をいれたりしているので、
彼の神主姿は本当に不思議な感じがする。
何だか大羽神宮に来てから不思議なものを見すぎている気が達樹にはしてならなかった。
「では、始めるかな」
そう言うと、坂下は左手に持った翡翠の首飾りを天高く掲げ、
右手を胸の前に突き出して素早く印を結んだ。
その速さは、健でも何を結んでいるか確認できないほどだ。
周りの空気がざわめくのを二人は感じる。それは、坂下を…いや、
翡翠の首飾りを中心に大きな渦を描いていた。
そして、だんだんと雲のような姿を現すその渦は、
翡翠の首飾りを取り巻くようになり、ついに翡翠自体に吸い込まれるようになった。
翡翠が金色に輝く。
翡翠から、立体映像のようなものが現れる。
それは、人の形をしていた。
そして…。
その姿は。
「・・・・・健???!」
そう、健そのものだった。
それは、人の形をしていた。
そして…。
その姿は。
「・・・・・健???!」
そう、健そのものだった。
「・・・僕だ・・・!!」
「ウソだろぉ・・・」
その姿に健も、達樹も、坂下すらも驚いた。ボサボサの髪に分厚いレンズの眼鏡、 そこから覗く、優しい瞳。服は学生服だが、やはり健が高校で着ているのと同じものだ。
「・・・ふむ、よく見ると健君ではなさそうだな・・・」
そんな中、坂下が健とその人との違いに気付いた。よく見ると、首筋に少し大きなアザがある。 それ以外は本当に健そのままである。
『…ごめんね。』
「「●▽ёжζ※#;◎Ф????!!!!」」
健と達樹が驚きのあまり、宇宙語を喋った。
「な・・・なななななななななななななななななななななな?!!!!」
「おじーちゃーーーーーーーーんっっっ!!!」
達樹は「な」しか喋らないし、健はちょっぴり泣き出しそうである。
「お、落ち着きなさい!!この者は亡霊ではない」
坂下のその言葉に、二人はちゃんと地球人に戻った。
坂下によると、これは魂の一部を封じ込めて、霊力に反応してメッセージを伝える「言霊」だ。
神霊者の中でも「言霊者」という特殊な訓練を受けた者にのみその技が継承されるという。
「じゃあ、この人は神霊者なのか?」
「おそらくのぅ。しかし…この人は一体…?」
3人の視線は、首飾りから現れた立体映像の男に注がれた。
しかし、彼はいくら待っても「ごめんね」以外の言葉を発しない。
「ふむ・・・しばらく、これを解析してみるかのぅ・・・」
そんな事を坂下が言い出した時、廊下から物凄い足音が聞こえてきた。
どんどんその音は近づいてくる。
バターーーーーーーーーーーーーンッッ!!!!!
どうやら音の発生源は派手にずっこけたらしい。慌てて健が障子を開けた。
「・・・撫子さん?!!どうしたの?」
仰向けにひっくり返って目を回していたのは、金髪美少女だった。
「ケ〜ン・・・大変・・・」
撫子の頭にはひよこがたくさん飛んでいそうな喋り方だ。
「どうしたの?!!」
しかし、その口調とは反対に、事態はとんでもないことだった。
「オウナが・・・オウナがいきなりセーラー服に戻った・・・」
それは、桜儚の霊力がゼロになったということだった。
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