学校の階段!?

第16章 久しぶり。

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「達樹君、どうした?」

早足で廊下を歩く坂下に、小走りの達樹が追いついたのは蔵の前だった。

「やっぱりそうだ・・・坂下さん、老師のところに行くつもりだったんでしょ?」

はっはっは、と顕彰は小さく笑った。

「さすが達樹君じゃな、勘の鋭さは超一級じゃ」

そして、達樹がいつもしているみたいに軽々と錠を開け、その重い扉を音を立てて開ける。 いつも何処にいるか分からない雅は、今日に限って扉の前に立っていた。

「お久しぶりです、老師」

坂下が礼をする。

「来ると思っておったよ、お主の“気”と青二才の“気”は見慣れておるでの」

からから、と白髪を靡かせながら美少女の姿の950歳は笑った。 しかし、その表情も坂下や達樹の話を聞き、すぐに一変する。

「翡翠の首飾りの言霊者、のぅ・・・」

過去につけた神霊者の名前等の記録を見ながら、雅は何度もそう呟く。

「私は言霊者という存在は知っておりましたが、もう絶滅した種と伺っております。 おそらく、50年前までに生存していた者かと・・・」
「源三さんに、その送り主の名前聞くの忘れちゃったんだよなぁ・・・」

そういえば、健と一緒に源三から首飾りを受け取った時、そこまで念頭になかったことを達樹は思いだした。 それが、今となっては悔やまれる。雅は、パラパラと記録を見ながら唸るだけだ。と、その時。

「そういえば・・・」
「な、何か思い出したのかよっ!!」
「・・・確か、最後の言霊者は65年ほど前に結核にかかって死んでおったな」

そう言いつつ、ぺらりとその該当者の記録を二人に見せた。 それには、名前や性別、実家の住所や能力等の細かいプロフィールと一緒に写真や似顔絵が載っている。 それを見た瞬間、達樹は「あっ」と声を上げたし、坂下は眉を動かした。

「・・・・・・健!!!」
「あほぅ」

ピコッ!!と雅がいつものように達樹をピコピコハンマーで力いっぱい殴る。

「痛ぇぇぇっっ!!!何しやがるクソジジィ!!!」
「何故わしがジジィ呼ばわりされねばならぬ、こやつは健ではないぞ」

いや「ジジィ」呼ばわりは別に間違っちゃいないのだが、 雅はぷぅっと膨れながらよく見ろと該当者の名前を指で指し示す。 少し黄ばんだようなページの上には、白黒の彼の写真とガリ版印刷の文字でその名前が書かれていた。 よく見ると、健の顔をしたその男の首にはアザがある。 そうだ、健以外でこの顔をしていたのは首飾りに映し出されたホログラム映像の男だ。

「そやつは結核にかかって死んだよ、20歳という若さだったかの。 霊力は弟の方が強かったが、言霊者としての才能は抜群じゃった」


「・・・・・・この名前・・・・・・!!!!!」


達樹は、少しだけ早く、その真実を知ってしまった。


いつか、健と、彼の最愛の人がたどり着く、悲しい真実に。




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