学校の階段!?

第2章  用務員は凄い人

 今日の学校での行事は学力診断のテストの山だった。

「そんなの入試で分かるじゃん!!」という生徒達のブーイングを尻目に、国語・数学・英語の3教科が行われた。 終わった後の生徒達は、皆放心状態だった。難しかったらしい。

「なぁ、五寸〜。出来たか〜?」

健の後ろに座っている男子生徒が声をかけてきた。

「あはは〜…駄目駄目。僕、中学の知識なんか入試で全部抜けたから…」

健の脳味噌からは煙が出ている。

「そっか〜…アイツは出来たのかな?」

男子生徒の声は急に小さくなった。

「アイツ?」

「山梨だよ、や・ま・な・し!!」

「達樹ぃ〜?」

健はちらっと達樹の顔を見た。少しうつむいている。

「数学で計算ミスしたみたいだよ〜。」

「え?!な、何で分かるんだよ?!」

男子生徒はたいそう驚いて問うたそうな(昔話調で)。

「え?だって、顔見れば分かるよ〜♪」

「そ、そうか…じゃ、じゃあな!!」

笑顔で答える健を見て、男子生徒はそそくさと帰って行った。

「あれ?何か変な事言ったかな?」

「おい、健。」

健は黒板の方に向き直した。達樹が鞄を持って立っていた。

「…あぁーっ!!行こう、達樹!!」

その行為が何を意味していたのか健はようやく分かったらしい。慌てて筆箱を鞄に詰め込むと、教室を後にした。

目指すは、第1棟1階である。


『遅いじゃない!!何やってたのよ!!!!』

昨日「朝イチで来い」と命令を下した待ち合わせの相手は怒りを噴火させた。

「ご、ごめん桜儚…今日は朝からテストで…」

健は余りの見事な噴火っぷりに恐怖を感じた。

『テストなんかより私の積年の恨みを晴らす方が大事でしょーがぁっ!!!』

「ご、ごめんなさいーっっ!!」

これでは幽霊ではなく生身の人間と接しているようである。

「健、桜儚さん何だって?」

桜儚の噴火顔が見えない達樹が尋ねた。

「あ〜…すっごい怒ってる…」

「みたいだな、その反応じゃ…」

『…ま、いいわ。今日の所は勘弁してあげる。さ、健。行きましょ♪』

桜儚は怒りを沈めたかと思うと、いきなり浮かんで飛び出した。

「ぐえっ!!」

既に健は『移動可能モード』の桜儚にとり憑かれている状態になっているらしく、彼女の飛ぶ方向に引っ張られ、首が絞まった。

「お、お〜な…タ、タンマ……」

バタッッ!!

情けない声を最期に出し、健は息絶えた(気絶した)。

『きゃぁーっ!!健、しっかりー!!一体誰がこんな事を…』

桜儚はとり憑き相手が来ない理由がやっと判り、急いで戻ってきた。

「健?!おい、健!!どうした?!原因は桜儚さんなのか?!!」

『ちょっと!!私が何したっていうのよ!!』

桜儚の甲高い声も、人間の達樹にはいい具合に聞こえなかった。







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