学校の階段!?

第4章  10年前の真実

4

「『…健…。」』


  そう言う声が聞こえた次の瞬間、健は二人に抱き締められていた。

  一人は温かい身体で、一人は温かい心で健の全てを抱き締めていた。


「健…健…!!!」

  体を抱き締めた背の高い青年は、健の名前をただ呼ぶだけだった。
泣いてはいなかったが、目をぎゅっとつぶっていた。

「達樹…たつきぃ〜…!!!」

健はまず青年の顔を見て、再び顔をくしゃくしゃにした。

「馬鹿野郎ぉ…泣くなよぉ〜!!」

「だって…だってぇ〜……」

いつもの情け無い声が、もっと情け無い声になった。

「…ごめんな、健。お前の辛かった事、知らなくて…。」

達樹は大きな手でクシャッと健の頭を撫でた。

 温かかった。

「…えへへ…。」

健は泣き顔で笑った。

「何だよ、こいつぅ〜!!」

達樹は健を再び抱き締めた。今度は笑顔だった。

「ったく、俺も桜儚さんも心配したんだぞ〜?な、桜儚さん!!」

達樹は健とじゃれあうのを一旦止め、明後日の方向を向いた。
勿論そっちに幽霊少女はいない。

「…桜儚。」

  健は達樹に気付かれぬよう、そっと自分の肩に手をやった。
体には触れられないが、その温もりはちゃんと桜儚に伝わっていた。
桜儚は健に見られぬよう、さっきよりギュッと健を抱き締めた。
何も言わなかったが、目は真っ赤だった。

「達樹君、羊羹食わんか?」

坂下の言葉で、慌てて桜儚は健から離れた。

「あ、いただきま〜す♪」

「達樹、この羊羹本当においしいんだよ〜。」

「え、お前もう食ったの?」

「うん!!」

健と達樹、いつもの会話だった。


「…あれ、桜儚どうしたの?顔赤いよ?」

『何でもないわよっっ!!!』


健の首は、にぶにぶな発言一つで絞まるのだった。






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