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学校の階段!?

第5章 安息、そして…。

  健は夢を見ていた。

  母の葬儀が終わった後の夢だった。

達樹や桜儚に母の死を告げてから、もうあの場面は夢に出てこなかった。

(桜儚が現れてから、僕の夢も進んでいる…。)

健はそう確信した。
自分がこの悪夢を消し去るには、桜儚の願いを叶えれば良い。

でも……。

(桜儚は、願いが叶ったらどうなるんだろ?)

考えた事もなかった。…考えたくなかった。




そこには少女が一人、立っていた。

綺麗に編みこまれた短い三つ編みが、風で少し揺れていた。

少女はこちらを向いて、微笑んだ。

つられて、自分も笑い返した。

そして、少女の方へ歩み寄った。

しかし、急に辺りが真っ暗になった。

少女は、どんどん遠ざかっていく……。

少女は、小さく呟いた。

          『バイバイ、健。』





   「桜儚ぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

がばっ!!と飛び起きた所は用務員室だった。

「・・・あれ?」

健は目をぱちくりさせた。

「おや、気がついたかい?」

  坂下がにこやか〜に障子の向こう側から参上つかまつった。
いつの間にか、健は布団で寝ていた。
その横には、桜儚が顔を俯かせて座っていた。

「おはよ〜、桜儚〜。」

健はにっこりした…が、桜儚は赤い顔を更に赤く染め上げた。

『お、おはよ〜じゃないでしょ!!まったく、霊力負荷ぐらい耐えなさい!!』

寝言で自分の名前を呼ばれたのがそんなに嫌だったのか…。
健は素敵に思い違いして、あはは〜と笑った。

「どうじゃ、体は?」

坂下は濃い目の緑茶を淹れてきてくれた。

「…そ〜いえば……」


そう言った瞬間、健の腹が盛大にオーケストラした。


『・・・ぷっ。』

最初に桜儚が吹き出した。健もつられて吹き出した。

「お弁当の残り食べちゃお〜っと。」

健は鞄から包みを取り出した。

「もう霊力が戻ったようじゃな。」

坂下は喜びつつ、健の回復力の速さに驚いた。


弁当を食べ終わった頃、少し汗をかいた達樹が笑顔で迎えに来た。






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