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学校の階段!?

第6章 狙われた桜儚(前編)

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健には、それがはっきりと見えた。

「クヌギだ!!!」

ガタンッッッ!!!

健は勢いよく椅子から立ち上がった。
数学をお教え中だった教師はその生徒の行動を不審に思った。
いつもは寝ているか、窓の外を見ているかの生徒が今日は立った。

…そうか〜、やっと私の授業を真剣に聞いてくれるようになったか〜…。

教師が感激しているうちに、健は教室を飛び出した。

「おい、健!!どうしたんだよ?」

達樹が追いついて、健を抜かして屋上へ向かった。

「グランドに…く、クヌギの木が…落ちたんだ…ぜぇ…それで…」

「グランド?!じゃあどうして屋上なんだ?」

「わ、わけは……後で……はぁ…はぁ…」



  屋上には普通の顔をしている達樹と顔面蒼白の健がいた。

「うわ〜、何じゃこりゃぁ…」

松田優作張りのセリフで達樹は驚いた。
そこにあったのはクヌギの木で覆い尽くされた屋上だった。

「これは…すっごいなぁ……」

床が見えない。「ここはクヌギ林か!!」って感じである。
しかし、健は大量のクヌギには目もくれず、ひたすら空を見ていた。
そこにいたのは……クヌギの葉をくわえた何羽ものカラスだった。
カラスは一声鳴くと、西の空へと飛んでいった。


――ズキィィィィッッ!!


その時、健の頭に頭痛が走った。

「あ…っ……!!」

「健、大丈夫か?!」

しゃがみ込む健に気付き、達樹は慌てて駆け寄った。
しかし、健の顔は苦痛に歪んではいなかった。

「達樹…。」

「ん?」

「…もうそろそろ、『奴』は現れるよ。"予感"がする―――」

その瞳は、今まで見た事のないものだった。






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