学校の階段!?

第7章 狙われた桜儚(後編)

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  健と達樹が用務員室に到着したのはちょうどその時だった。

「桜儚!!無事か?!」

『健!!達樹君!!』

「来たか、神霊者と憐れな従者。」

金髪少女は瞳の色をますます赤く染め上げた。

「…撫子…。」

達樹はそれ以上何も言えなかった。

「撫子さん…黒魔術をいつ…?」

神主の正装をした健はいつもの穏やかな口調で尋ねた。

「貴様は神霊者のくせにそんな事も知らないのか。シュパイヤー家は代々黒魔術者のーそれも『除霊者』の家系としては有名だ。」

ふんっ、と撫子は鼻を鳴らした。

「『除霊者』?!…そうか、それで桜儚を…。」

「健、『除霊者』って…?」

達樹がそっと尋ねると、健は撫子を直視したまま応えた。

「自縛霊とか、何かの理由で成仏出来ない霊を強制的にこの世から消すのが仕事の神霊者の事だよ。」

「そう、私の仕事は気高く意義あるもの。お爺様は現役時代、何億という亡霊達をお救いしてきた。そう、お父様もだ。私も二人のような『除霊者』になるのが夢なのだ…」

撫子はうっとりしながら言った。

「そんなお爺様は今回私に重大な使命を与えてくださった。」

「それが…桜儚を除霊する事なんだね。」

「その通りだ!!70年近くこの世にとどまる"dirty phantom"がいるとお聞きになったお爺様はその除霊に私を指名してくださった。尊敬するお爺様の為にも、今回の仕事は必ず成功させねばならないのだ!!」

そう言うと、撫子はマントを広げた。物凄い突風と共に大量の札が舞った。


「摩訶防術薩婆訶!!!」


健はとっさに印を組んで呪文を唱えた。目には見えないバリアのお陰で札は全て跳ね返された。

「ふん…基本の神術はお手の物のようだな。」

気に食わない、という顔をして撫子はマントの下から小さな瓶を取り出した。

「だが、これで終わりだ!!」

そう叫ぶと、撫子はその瓶を健目掛けて投げつけた。

「まだ分からないのかい?そんな物効かな……?!」

途中まで余裕ぶっていた健の顔が固まった。瓶のフタが取れ、中から緑色の液体が出てきた。

「達樹、逃げて!!」

健が叫ぶのと同時に液体はバリアに当たった。激しい電撃が生じ、バリアは中にいた健達共々はじけ飛んだ。

「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

「…どうだ、神霊者。お前の最も傍にいる人間の髪で作った除霊薬は。」

あははは!!と満足そうに笑いながら、撫子は煙の上る方へと足を進める。
と、煙の方から赤い閃光が飛んできて、撫子の頬を掠めた。

「…He's a persistent devil.(しぶとい奴)まだ生きているのか。」

撫子は無表情で頬に付いた切り傷から出る血を拭った。
だいぶ収まってきた煙の切れ間から、少し傷ついた健と無傷の達樹、桜儚が見えた。

「あんな程度の攻撃では死なないよ、撫子さん。」




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