学校の階段!?
第7章 狙われた桜儚(後編)
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「あんな程度の攻撃では死なないよ、撫子さん。」
いつもと同じ柔らかい微笑みで、健は次々と赤い閃光を発した。
「くっ…!!」
間髪を入れる事なく放たれる光の刃は撫子の全身を斬りつけた。
「お、おい、健!!このままじゃアイツ…」
後ろで見ていた達樹は健を止めようとしたが、笑顔で返された。
「大丈夫、この『赤光』は軽い傷を付ける程度の技だから。」
「神霊者よ!!」
その時、鋭い声と共に黒い光が後ろを向いていた健に命中した。
「ぐあっっ…!!」
「健!!」
健は背中に激しい痛みを覚えたが、堪えて立ち上がった。
撫子の瞳は怒りで激しく燃え上がっていた。
「何故私の命を奪わない?!何故敵を倒さない?!貴様はこの気高き私を愚弄しているのか?!!」
「ち、違うよ。撫子さん、落ち着い……」
「その名で私を呼ぶな!!私は…私はシュパイヤー家の正式な後継者、モニカだぁぁぁっっ!!!」
半分錯乱した撫子は先程の除霊薬の瓶を桜儚目掛けて何本も投げた。
「桜儚!!!」
桜儚は飛んでくる瓶から逃げられない。一瞬、本気で死を覚悟した。
『…私、このまま本当に成仏しちゃうのかな。』
そう考えると少し踏ん切りが付いたような気がした。桜儚は目を閉じた…が、その冷静さもすぐ消えてなくなった。
次に目を開けると、目の前には必死に自分を守る健がいたのだった。
『健…』
傷を負いながら、撫子を殺さないようわざと弱い術しか使わないで自分を守ってくれている健を見て、胸が苦しくなった。
「桜儚。」
不意に名前を呼ばれて、桜儚は我に返った。
『え?!あ、な、何?』
「桜儚は…絶対僕が守るから。安心してて。」
その優しすぎる声と、優しすぎる微笑を見て、桜儚の心臓はまた悲鳴をあげた。
桜儚ははにかんだ笑顔で頷く事しか出来なかった。
「撫子さん…。」
健は少し悲しそうな顔を撫子に向けた。
「何だ?その"汚れた亡霊"を攻撃するなというなら無理な話…」
次の瞬間、撫子の瞳の色は一瞬元に戻った。
健から放たれる『気』から今までの数百倍もの威圧感が感じられた。
(何だ、この凄まじい『気』は…?これだけで押し潰されそうだ…!!)
「僕を殺すなら殺しても良い…でも、桜儚や達樹を巻き込むな!!」
そう叫ぶと、健は何か長めの呪文を呟き始めた。
「く…っ、な、何をする気だ?!」
撫子は再び黒い光を発射した…が、健の周りから発せられている『気』にはじき返されてしまった。
「これは…これほどの『気』が渦巻くとは……まさか?!」
撫子が気付いた時はもう遅かった。
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