学校の階段!?

第7章 狙われた桜儚(後編)

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撫子が気付いた時はもう遅かった。

「奥義!!全浄輪廻!!!」

最も強い霊力の持ち主だとこの世の生物全てを消滅させてしまうという危険な技である。健の周りの物は全てブラックホールのような闇に飲まれていく。

「健…っ!!お前、何を…?!!!」

達樹の声も今の健には届かない。ただ健を中心として竜巻のような風が吹き、闇が足元に広がって行く。健の目は何処か遠くを見ていた。

「きゃあああああ!!!」

叫び声を聞いて達樹はハッと気付いた。見ると、撫子が闇に飲み込まれかけている。

「撫子ぉっっ!!!」

達樹は無意識のうちに走り出した。ただ、撫子を助ける為だけに。
気付くと、怯えきった金髪少女を抱きかかえて走る自分がいた。

「…タツ…キ…」

少女は出会った頃の瞳の色に戻りきっていた。

「…大丈夫か?」

それだけ言うと、達樹はにっこり微笑んだ。

「何故…何故私を助ける?私はタツキやケンを殺そうとした者だぞ?」

撫子の目は泳いでいた。頬は真っ赤に染まっていた。
達樹は全力疾走しながら笑った。

「お前、そんな事も分からないのか?」

「な…!!」

「…俺がお前を助けたかったからだよ。それ以上の理由なんか無い。」

撫子は何も言えなくなった。何も言わなくても良かった。ただ、達樹の真剣な眼差しをずっと見ていたかった。

「…なぁ、健を止める事は出来ないのか?」

「それは…難しい。ケンは闇の中枢にいる。あそこまでは私達では行けない。」

「…『私達では』?」

撫子は頷いた。

「恐らく、たった一人だけケンを止められる。」

そう言って、撫子は最後の一瓶をマントの下から取り出し、投げた。
瓶は見事桜儚の結界に当り、結界は粉々に砕けた。

「…そうか!!桜儚さん!!健を頼む!!!」

達樹は見えない相手にそう叫ぶと、撫子を抱きかかえて逃げた。

『言われなくっても分かってるわよ!!』

結界から出た桜儚は逆風に耐えながら闇の中枢へと進んでいった。




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