学校の階段!?
第8章 衣替えと栗羊羹
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撫子が用務員室の常連になった事で、室内は少し明るくなった。
坂下は「孫が増えたみたいじゃ」と喜んでいたが、桜儚は少し複雑だった。
「そうだ、ケン。これ、読みたいと言っていた…」
そう言うと、撫子は鞄から分厚い本を1冊取り出した。
「あ、ありがと〜!!」
健が嬉しそうにしているのを見て、桜儚と達樹は少しムッとした。
「何借りたんだ?」
わざと大声で達樹は健から本をかっぱらった。
「何々…『ゴマフアザラシ浪漫紀行〜見渡す限りゴマだった〜』?!」
表紙の絵は最高に愛くるしいゴマフアザラシの写真だった。
思わず「可愛い」と呟いた達樹は本を開いてみた。
そこにあったのはゴマではなく、魔方陣の図と横文字オンパレードだった。
「…中身は『黒魔術魔方陣事典1』だ。」
何だ…と達樹はあほらしくなって健に本を返した。
何処かで二人だけの共通の趣味とかがあったら嫌だと思った自分がいた。
それが焼きもちだと分かっておかしかった。
桜儚も再び貼られた『休霊地』の札の上でホッとしていた。
『…それで、撫子は今日何しに来たのよ?』
つっけんどんな態度で桜儚は尋ねた。
「何しに?目的が無いとここへ来てはいけないのか?」
撫子はきょとんとしながら緑茶を飲む手を止める。
『そうじゃ…ないけど…』
余りに自分が変な態度に出ているのを自覚して、桜儚はしどろもどろった。
「あれ?ひょっとして桜儚さん、やきも…」
『やかましいわよ!!達樹君っ!!』
達樹が全て言い終わる前に桜儚の怒号が飛んできた。
坂下はそんな光景を健と共に笑顔で見ていた。
「仲よしだのぅ、皆。」
「はい、それだけは取り柄です〜。」
微笑む健に、坂下はそっと囁いた。
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