学校の階段!?

第8章 衣替えと栗羊羹

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「次は達樹君じゃな。」

  はぁ、と達樹は間の抜けた返事をした。
自分に霊力が無いのは周知の事実である。実際、今も桜儚の居場所が分からず、声だけが聞こえる。

「君には、健君のサポートをして貰いたい。」
「でも、俺…」

坂下が達樹の顔の正面で手を止め、言葉の続きを遮った。

「君には霊力が無い、それは事実じゃ。しかし、霊力が無くても『気力』と『根性』はある。」
「そ、そうかな…」

褒められて、達樹は少しむずがゆくなった。

「そうじゃよ。だから、1ヵ月間健君の成長を見届けてやってくれんかね。 君がいた方が健君も安心するじゃろうし。それに、大羽神宮には知識豊富な老人や神霊学者もたんとおる。 退屈はするまいて。」

達樹は雑学やらが大好きである。それを聞いて、体が少し動いた。

「坂下さん…行くよ、俺!!」

「わ〜い!!達樹も一緒だぁ〜♪」

健は達樹の手を取って、再び跳躍し始めた。達樹は初めビックリしたが、 すぐに笑顔になって大きく飛び回った。

「夏休みヨロシクね、タツキ♪」

撫子がぎゅっと手を握った。 達樹は「お、おぉ」と戸惑いながら返事をしたが、心の中では独り言を言った。

(お前も行くってのも、理由になるんだけどなぁ…)

その独り言は、ちゃんと心の中の金庫に閉まって、鍵をかけておいた。

いつか、話せる時が来たらー――って。

「何考えてんだ、俺?」


達樹は一人で笑った。健と撫子は互いに顔を見合わせ、首を傾けた。




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