学校の階段!?
第9章 小村雑貨店
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「「お〜じゃま〜しまぁ〜すぅ〜。」」
裏口のドアを開け、中に入った。裏口と台所が一緒になっていて、すぐ土間と畳部屋がある。
昔の家そのものって感じだ。
「あら、あなた達は…?」
ちょうど台所で何かを刻んでいた痩せ型のお姉さんが健達を不思議そうな目で見た。
泥棒じゃなさそうね、って具合だ。
「俺達、店の前でメガホン持った人から昼飯食べて行ってくれって言われたんです。
それでこちらに回ってきて…」
驚かせてすみません、と達樹は律儀に挨拶と二人分の自己紹介までした。
こういう所が達樹の凄い所である。お姉さんは達樹に見とれていた。
「そうなの〜。達樹君に、健君ね。私は小村愛子。あの小太り店主、小村忠治(ただはる)の女房よ。」
えぇっ、そんなに若いのに?!と健は思わず言ってしまった。どう見ても愛子は30には見えない。
愛子はこれでも主人と同い年よ、と言って健の頭を撫でてくれた。
雪葉と同じ温かさで、健は少し涙目になった。
「さ、あがって♪今お昼作っちゃうから♪」
二人は愛子に促されるまま靴を脱いで畳部屋に上がった。
ちゃぶ台に、旧式テレビに、桐タンスに、こけしと本当にタイムスリップしたみたいだ。
「うちより年期入ってるね〜…」
健は裸電球を見上げて感心していた。
「俺、一度でいいからちゃぶ台返ししてみたかったんだ〜…」
達樹の目はちゃぶ台に釘付けである。
「ボロい家ぢゃろ?」
ふぉっふぉっ、という笑い声と共にしわがれた声が降ってきた。
ビックリした二人が同時に振り返ると、そこには水戸黄門みたいな爺様が立っていた。
髪はほとんどないが、立派な白髯を生やしている。
「はい、凄いです〜。」
笑顔で言う健の脇腹に達樹が「おい、健!!」と鉄拳を食らわせた。
しかし、爺様は怒るどころか、更に声高に笑いたもうた。
「うむ、正直な御子ぢゃ!!若いうちから正直な方がえぇわい。」
気に入ったぞい、と言いながら爺様はどっこいしょと座布団に腰を下ろした。
「えっと、お爺さんは…」
達樹がそう言いかけると、爺様は「おぉ、そうぢゃった」と手を打った。
「わしの名は小村源三(げんぞう)、年は今年で90歳になる。生粋の大羽っ子ぢゃよ。」
はぁ、と二人は微妙な返事を返した。
「江戸っ子」なら聞いた事があるが、「大羽っ子」というのは微妙なネーミングである。
「源三さんが俺らをここに招いたんですよね?」
達樹の問いに、源三はそうぢゃよ、と笑顔で答えた。
「で、何が聞きたいんですか〜?」
健もニコニコしながら「何でも聞いて下さい」と付け加えた。
すると、源三の顔が急にシリアス劇画タッチになった。
「…実は、お前さん達に頼みがあっての。」
「頼み?」
達樹も健もシリアス劇画タッチになって、固唾を呑んだ。
「それは…」
その時だった。
「は〜い、お待たせ♪お昼ご飯よ〜♪」
何も知らない愛子が出来たての焼きソバを持って現れたのは。
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